You are one of my…
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「お前、どこ行ってたの?」
安形の声でふと我に返る。ざわめいている教室と、開かれないまま今日の役目を終えた数学のノート。いつの間にか5限は終わっていた。
「・・・あー、授業、終わったんだ。」
「は?て、うわ。お前大丈夫?顔色すげーぞ?」
若干引いてる安形の顔から察するに、オレは相当酷い顔をしているらしい。
えーと、なんでだっけ?・・・ああそうだ、オレはお昼休みにあそこにいて。そこで、あれを・・・。
ぼーっとしていた頭が働きだし、そしてあの階段で見たものを思い出す。途端にみぞおちの当たりが苦しくなって、喉がひっつれる。
「う、ん。なんでもない。」
「なんでもなくねーだろ、それ。」
「いやいやいや、本当になんでもないから。大丈夫だから。」
「でもお前さっきから、
「あーもう、なんでもないったら!!」
言うことを聞いてくれない安形に苛立って思わず大きな声を出してしまった。慌てて周りを見渡したけれど、幸いみんなそれぞれのお喋りに夢中のようだ。
「・・・ごめん。でも本当になんでもないからほっといて。」
怒るでもなくただ驚いたような安形の顔に、いたたまれなくなって机に顔を伏せる。心配してくれただけなのに悪いとは思うけど、今は安形と喋りたくないんだ。
完全に寝る体勢をとって、もう話かけるなとの意思表示。しばらくの沈黙の後に安形が前を向いたのが音で分かっても顔を上げる気にはならず、そのまま目を閉じた。
目を閉じたまま、授業開始のチャイムが鳴る瞬間をただひたすらに待っていた。