PSBU
□Distance
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今日はSMエンターテイメントのメンバーで、クリスマスのアルバムを出す。
私はBOAオンニとコラボで『Distance』を歌うことになっていて、久しぶりにオンニに会えるんだと思えば、足取りも弾んだ。
「チヒロ!」
収録現場に着いて控室で荷物の整理をしていたら、突然ドアが開いた。
その声に振り返れば、満面の笑みでBOAオンニが私の所に両手を広げて駆けてきて、ぎゅっと私を抱きしめた。
うっ、相変わらず力が強いっ…!
「チヒロ!会いたかったぁ〜久しぶり!!」
「オンニっ!本当にお久しぶりですっ!お元気でしたか!」
「元気だったよ!チヒロ…いろいろ大変だったわね…。でも元気そうで良かった」
そう言ってオンニが私の頭をぐりぐりと撫でまわす。
本当に会うのは久しぶりだったし、BOAオンニにはデビュー当時から沢山助けてもらった。
こうやって二人で話すのも半年ぶりくらいだから、本当に会えて嬉しい。
「シングル、好評だったみたいね?私昨日やっと買いに行けたのよ?忙しくて…」
「嬉しいです!ありがとうございますっ…、最近すごく思うんです。自分はたくさんの人たちに支えてもらって、今も変わらず歌を歌えてるんだなって……だから、周りの人たちに日々感謝してるんです。前だってそうしてましたけど、最近は尚更…」
「そうね、その気持ちは大事だわ」
オンニはそう言って笑うと、「あ!そうだ!」と気付いたように手を叩いて、オンニがいつも愛用しているバックから小さな赤い箱を取り出した。緑色のリボンで可愛く装飾されているそれを差し出され、私は何かと思いながらもそれを受け取る。
「オンニ…これは?」
「開けてみて?チヒロにクリスマスプレゼント!少し早いんだけど…」
「プレゼントですか!?うわ…なんだろう」
私は期待に胸を躍らせながらも丁寧にその包装を解いて、箱を開ける。
と、中には…ガラスでブルーのハートが象られたネックレスが輝いていた。
「!オンニっありがとうございます!」
「ソロデビューの御祝いも込めてね?」
「はい!」
本当に嬉しくて、私はその綺麗なブルーのネックレスをしばらく眺めたままでいた。
そして、
――その頃、
sd「これ…どうすんの!?」
kh「…どうすんのって、俺に言われても――どうしたらいいの?」
sm「どうしたらいいんだろうねぇ〜」
kh「こんな唐突にこの仕事が入るなんて思いもしなかった…」
eu「あの番組怖すぎるっ…普通もっと前に話が出るもんじゃないのっ?」
lt「俺頭可笑しくなりそうなんだけど…え?どういうこと?キュヒョナが結婚?」
rw「羨ましいなぁ〜」
dh「事務所に報告してまだ間もないっていうのに…容赦ないねぇ、」
kh「怖いって…ってかマネヒョンなんで隠してたの?」
マネ「悪いな、恨むなら俺じゃなくて番組制作者を恨んでくれ。俺は無関係だ」
sd「そんなアホな」
kh「今日知らせれて週末から収録って、なんの準備もしてないんだけど…」
ys「しかも台湾だろ?」
kh「はい」
lt「俺ほんと、死ぬかもっ」
rw「ヒョンさっきからそればっかりw」
sm「相手は誰なんだろう……でも、そんなことよりキュヒョナはチヒロのことが心配だねぇ…」
一週間前、チヒロとの交際の許可を貰いに、事務所に二人で報告をしに行ってきた。
こういうことは早めに話しておくべきだと思ったし、二人とも事務所の皆やメンバーに隠れて付き合うのは嫌で、ちゃんと周りに納得と許可を得ておきたかった。
今ではもうSMファミリーはこのことを知っているけれど、まだ世間には公表はしていない。なにせチヒロはデビューしたてで大事な時期だから、あまり波を起こすべきではないと社長が言っていたし、俺もそう思うからそれは仕方のないことだと思う。
だけど、
事務所にこのことを報告したのにも関わらず、自分に入ってきた仕事にどうしたらいいのか分からなくなる。
だけど今さらになって断れるものでもないし、仕事なのだからそんなことできっこない。
でもこれは普通の仕事とは違うし…
本当に困ったことになった。
折角二人で思いを通わせることができたのに…出鼻を砕かれるなんて――、
俺は自分の手の中の緑色のカードこと”ミッションカード”を見下ろして、深いため息を吐いて額を抑えたのだった。