PSBU
□Distance
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「ウギョルに?」
「うん」
アルバムの収録が終わって、夜にチヒロの部屋を訪ね台湾で撮影することになったウギョルの話をすると、チヒロは俺の顔を見て始めは驚いたように目を見開いたけれど、それからしばらく考え込むように顔を俯けて、そして顔を上げた。
「仕事だから、仕方がないよ!頑張って!」
そう言ってチヒロは笑って、俺に向かって拳を握って見せる。
それを受けてありがとうと言えるほど、俺はチヒロに疎くはないつもり。伊達に同じ時間を過ごしてきていないんだから……
「チヒロ、正直嫌でしょ?」
「!」
そう問いかけたら、チヒロはうっと喉をひきつらせて、それから首の後ろを触りながら苦笑を浮かべる。
「まぁ…嬉しいとは、…思えない、かな――でもほらっ!キュヒョナには悪いけどっ、」
チヒロは俺の胸のあたりを、とんと拳で叩いて、
「見なきゃ済むことだしっ!!」
満面の笑みで言い放った。
そのあまりにも率直な言葉に、俺は思わず噴き出してしまう。
嫉妬されて拗ねられるんじゃないかと思ったけれど…、予想もしなかった言葉に不意をつかれて笑いが止まらない。
「っチヒロって…すごいっ、!」
「…私、そんなにおかしなこと言った?」
チヒロはきょとんとして爆笑している俺を見つめて首を傾げた。そんなチヒロを笑いが止まらないまま抱きしめたら、「まだ笑ってるの?」と言いながらもチヒロも俺のことを抱きしめ返してくれる。
やっと笑いが落ちつい着たところで、話を戻す。
「仕事でやることだから、…チヒロは気にしなくていいし。見なくてもいい。むしろそうして?」
「私も新曲の活動で忙しいから、見たくても見れないよ。………でも、」
「でも…?」
「…ごめん。……見たくないっていう気持ちも、正直ある」
ぎゅっと俺の背中の服を掴んで言ったチヒロに一瞬息が詰まった。
今の……ものすごく可愛いかったんだけど――
嫉妬してもらえるのはやっぱり嬉しい。でも、ウギョルを見るのは、チヒロの立場からすればキツイっていうのもよく分かる。
俺だってチヒロが俺じゃない男と仮想でも結婚して一緒にいるところなんか見たくなんかないし…、想像しただけで嫉妬で頭がおかしくなりそうだなんだから。
「俺が一番愛してるのは、チヒロだから」
「っ……私も、だよっ」
照れ屋な君にキス
(真っ赤だね?)
(ぅ…真っ赤、かな?//)