PSBU

□それだけで十分
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「髪巻くんですか!?」

「もう煩い!言うこと聞きなさい!折角朝早くから呼びだされて来てやったんだから」

「でもオンニ、私女の子の服なんて持ってないですよ!レトロなカフェって言われても何を着て行けばいいのかッ」

「…はぁ、そんなことだろうと思っていろいろ持ってきたから、私に任せなさい」

「オンニや…ありがとう」

「まったく、忙しいわね」

「…オンニ…TT」

「あーもう泣かないの!なんとかなるわよ、作らないでいつものノリでやりなさい」

「笑いに走っていい?」

「どうせ走らせるでしょう」


 SJのスタイリストを担当してもう長くなるけれど、チヒロはいつまでたってもファッションには疎い。
 私服はいつも種類の違うシャツかパーカーしか着ないから、ファンブログで『本日のチヒロの空港ファッション』という題で取り上げられていることすら知らないのだろう。

 
 今日なんてウギョルの撮影におしゃれをして来いと言われたらしく、半泣きで私に電話をかけてきた。

 丁度仕事もなくて空いている時間だったから良かったものの…少しは自立してもらわなきゃ困る。もう大人なんだから。


「まあでも、良く考えたわね…番組側も」

「え?」

「視聴率なら取れそうね」

「なに?なんで?」

「なんでもない」


 切って帰ってきた時よりも短くなったチヒロの髪を緩くアイロンで巻いて、薄化粧をする。この子の顔は元々綺麗だから、化粧をしすぎると折角の良い顔を逆に潰してしまうから。




「ほら、可愛くなった」

 そう言ってチヒロに手鏡を持たせると、流石オンニとチヒロは意気揚々と笑う。

「可愛いかな?」
 

「うん、オンニ!ありがとう!!」

 チヒロはそう私にお礼を残して、バックを肩にかけて宿所を出ていく。

 やっぱりチヒロがSJにいると、スタイリストとして仕事のやりがいが増す。

 それに、チヒロのことはもう自分の妹のように思っているから、またああやって元気な姿を見ることができて、本当に良かった。





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