PSBU
□涙で瞳が溶ける前に
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「っい、たぁ」
「どこ?此処?」
「違う、もっとこっちです…」
「…ここ?」
「っぅ、もっと上、ですっ」
どうしよう、チヒロがめっちゃエロい声を出してる;
チヒロを宿所の部屋まで運びこんで、ベットの上に座らせた俺は、チヒロの足の痛む場所を手で按摩して探しているわけだけど、やって後悔する。
チヒロって足がすごくきれいで、肌も柔らかくて白い。触ってるだけで心臓がばくばくだ。
でも、チヒロの膝から上の太ももの辺りを見て、俺は息を呑んだ。
チヒロが今日来ている服はひざ下までのワンピースだったから気付かなかったけど、チヒロの其処には、手術の傷痕がしっかりと残ってる。
それを見動揺した俺にチヒロも気づいたみたいで、チヒロは慌ててスカートの裾を下した。
「っ…!」
「チヒロっ」
「すみませんっ、嫌なもの見せてっ」
ああ、こういう所はやっぱり女の子だ。いくら男の子を気取ろうとしたって、自分の身体に傷跡が残るのは痛い。
チヒロの顔の傷跡は、綺麗に境目もついているから酷くは見えないけれど、チヒロの太ももの足にはしっかりとメスを入れられて、縫われた痕がある。
俺の馬鹿、動揺なんかして、チヒロが傷つくことぐらいわかってたのにっ
「チヒロ、大丈夫だから見せて」
「嫌ですっ」
「チヒロ…」
「きもち、わるいからっ」
チヒロはそう言って、スカートをぎゅっと握って顔を俯ける。
「チヒロ、そんなことない」
「っ」
「気持ち悪くなんかない。これは綺麗な傷だよ」
「!?」
チヒロがそれに顔を上げた。
驚いたように見開かれた瞳には涙の膜が張っていて、今にでも涙が零れそうだ。
「チヒロが、一人の女の子の命を助けてできた傷なんだよ?…それが気持ち悪いなんて、俺は思わない」
「っオッパ」
「…ね?だから見せて。じゃなきゃどこに薬塗ったらいいか分からないでしょ?」
「自分で、できます」
「駄目。俺がやる」
チヒロがぎゅっとワンピースの裾を掴んでいる手の上に、そっと手を重ねて言ったら、チヒロは何も答えずに、顔を俯けた。
それは許可をもらったのだと解釈して、俺はチヒロの足の痛む場所を探る。
「……此処?」
「っぅん」
「塗るよ」
触れてびくりと身体をこわばらせた場所。傷口用の薬と、痛み止めの塗り薬を患部に縫い込んでいると、ポタリと俺の手の甲に、涙が落ちてきた。
「…チヒロ」
「ふ、」
チヒロは嗚咽しないように口元を手で押さえて、泣いている。
「ごめん、俺が無神経だった。泣かないで…」
薬を塗っていた手じゃない左手でチヒロの涙を拭うと、
「ちょっとびっくりしただけ、ですからっ…」
そう言ってチヒロは首を振る。
怒ったっていいじゃないか。なんの許可もなくチヒロの傷に触れた俺を叱っていいのに…
チヒロが事故で負った傷は、決して軽いものなんかじゃなかった。SJ脱退を決意しいなきゃいけないほどに酷い傷だったのに、そんな傷が痕にならないわけないのに…、
「……絶対、そんなことないから。チヒロの心はだれよりも綺麗で優しいよ…心が綺麗な人の身体が、綺麗じゃないはずなんかないんだから」
「…それは、褒めすぎですよ」
チヒロはそう言って笑って、俺がチヒロの頬に触れている手を掴んだ。
「オッパ……今日は助けられてばかりです」
「いいじゃん。チヒロはマンネなんだから。もっと甘えていいよ」
「みんな同じこと言うんですね」
そう呟いて、チヒロは自分の目の端に浮かぶ涙を手で拭って苦笑する。
「もっと甘えろって、そればっかり」
「チヒロは一人で気張りすぎなんだよ。……それが俺は心配だよ、いつも」
「はい――今日も心配かけちゃいました。ちゃんと、言うつもりいだったんですよ?」
「うん、…ならいいよ」
不安げだったチヒロの表情が、ほっと緩んだ。
そんなチヒロの頭を撫でて、
「チヒロ、STEP上手だったよ」
と言えば、チヒロは心底嬉しそうに微笑んだ。
「えへへ、頑張った甲斐がありました!」
笑顔が一番
kh(…、)
rw(キュヒョン?どうしたの?チヒロの部屋の前で――)
kh(っいや、別になんでもない)
rw(?どうしたんだろ…)