PSBU
□君が欲しいけど、
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rw「チヒロやぁ…かっこいい!」
「そ、そうかな?」
控室で、カムバックステージに向けての準備をしている中、リョウクがチヒロの姿を見て声を上げた。
黒いスーツを身に纏ったチヒロは、本当に格好良い。
チヒロは『Oppa.Oppa』でカムバックを迎えたけれど、あの時の衣装とは違って、大人っぽいそれに思わずため息が零れた。
今まで見た中で、一番シルエットが綺麗だし、かっちりとしている衣装だけれど、チヒロの雰囲気は見ていて柔らかく感じるところが不思議。
ys「チヒロ、なんか大人っぽくなったなぁ」
sd「すっごくいいよ!」
褒められてチヒロは照れくさいのか、首の後ろを触りながら俯いている。
eu「チヒロ…カッコイイよな」
dh「…うん」
eu「嬉しい?顔にやけてる」
隣に立っていたヒョクチェが、横目で俺を見ながら言うのに、頷く。
dh「――すっごく嬉しい」
こうやって同じ控室で、同じステージに立って、同じ時間を分かち合って、一緒に泣いたり笑ったり、いろんな感情を分け合いながらまた過ごせることが、すごく嬉しいと思う。
それに、
lt「おーい、そろそろ出番だ!集合!」
ステージ袖でトゥギヒョンが俺たちをいつも通り集めて、メンバーで手を重ねる。
lt「…今日は、チヒロを含めて、やっとメンバー全員が揃ってのステージだから、気を引き締めて行けよ!」
「「はい!」」
「あ、あの!すみません、皆…少し時間をください」
そんな時、トゥギヒョンがかけ声をかける前に、チヒロが右手を上げた。
sm「?どうしたの?改まって…」
皆がチヒロに注目する。
それにチヒロは照れくさそうに少しだけ微笑んだ後、口を開いた。
「――半年以上、私のことを待っててくれて、本当に心から感謝してます。…ありがとうございます。此処に戻ってこれて、良かった。皆と一緒に、また同じ場所を見て行けるのが、本当に嬉しいです。……皆、」
ステージでは、他のグループが踊っているから、例えステージの袖でもスピーカーから流れてくる音源と歓声が聞こえて、チヒロ自身も意識してなるべく大きな声で話しているけれど、しっかりと耳を傾けていないとよく聞こえない。
でも、
「本当に、大好きです…」
この言葉と笑顔は、しっかりと俺たちの耳と心に響いた。
こうやってまた、傍でチヒロの笑顔を見れること、
「「チヒロオッパ〜!」」
照明の明かりと、ファンたちの歓声を浴びながら、踊り歌うチヒロの背中を、見れることが…
dh「…チヒロ…泣いてるの?」
「ッ、すっごく幸せで、…涙が…」
沢山の歓声に包まれて、
約束通り完璧なパフォーマンスと歌を見せてくれたチヒロが、ステージを終えて袖に戻ってきたとき涙を流して――、
その涙を、すぐに拭える場所に、俺がいられることが、
透明なそれ
(俺は、すごく幸せだよ)