短編
□雪のような
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12月、イタリアは既に雪がパラつく、イメージチェンジかのように普段は近づきがたいヴァリアー本部も屋根に微かに積もった雪のおかげで好印象に見えないこともなかった。
ヴァリアー幹部のフランは今日は非番なため部屋で雑誌片手にベッドでゴロゴロ、そろそろベル先輩が帰ってくるかな、なんて恋人の帰りを待ちながら雑誌のページをめくる。
ふと、思いついたかのように立ち上がり掛けてある可愛らしい黒いポンチョに身を包む、そのままバルコニーに出た。
「さっむー…」
白い息を吐きながらフランは1人空を見る。日焼けしない体質のフランは年中肌は白く、温かい部屋から急に寒いところに出たため鼻が少し赤くなる。
1人、バルコニーに立ちながら考えるのは自分と恋人のベルのこと。
出会ってすぐに2人は恋に落ちた、
両想いだ、付き合うのは当たり前。
だが2人とも男。
いわゆる同性愛者。
ベルは『性別なんて関係ない。』
と言ってくれるが
はたしてそうなのか?
とフランは時々考える
ベルは自分のことを愛してくれている。
また自分もベルのことを愛している。
これは紛れもない事実だが、いつまで続くのだろう。
それを考えるだけでフランは涙が出そうになる。また自分の女々しさに呆れる。
フランは空を見つめ続ける。
そして空から降ってくる雪を手で受け止める。
フランは自分の手のひらの雪を見る。
雪はすぐに溶けて消えてしまう。
儚いものだ。
自分たちの幸せも雪のように儚いものだったら…と考えるのはもうこれで何回目かわからないほどだった。
いっそのこと自分たちが雪のように溶けて消えてしまえばどれだけ楽か。
そんなことを考えるてると後ろから聞き慣れた声と温かい腕。
「フーラン」
「先輩、お帰りなさーい」
フランはいつの間にかベルの腕の中だった
「ただいま、寒いし部屋入ったら?」
後ろから回された腕がフランの手を握る。
「冷たっ!かなり冷えてるじゃん」
「結構いましたからー」
腕についた時計を見たらバルコニーに来てから1時間も経っていた。
上を向くとベルと目があう、ベルはニコニコ幸せそうに笑っていてフランも頬が緩む。
「早く部屋入ろ、で2人で温まろーぜ」
「はーい」
フランはベルと手を繋いで部屋に入った
。
どんなに儚くても、
2人の愛は確かに存在する。
それだけで充分。
→後書き