短編
□ケーキ。
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ベルが向かったのは、ルッスーリアとフランのいる調理場に設置されてるカウンター、ここならフランの邪魔にはならないし、フランを見て暇つぶしもできる。
料理が苦手なフランのことだ。
きっと何か面白いことをやらかしてくれるだろう。と期待混じりにベルはカウンターの椅子に座った。
「あー先輩、来たんですかー」
フランは横目でベルを見ながらトントンとリズミカルに包丁をまな板に落とす。
玉ねぎのみじん切りをしているようで、目許には涙が溜まっていた。
「フランちゃんがいなくて淋しいのよね〜」
会話に入ってきたルッスーリアがは茶化すように言う。
恥ずかしいのか嬉しいのかフランの頬が薄い桃色に染まる。
「淋しいじゃなくて暇なだけだし」
ベルがルッスーリアの言葉を否定する。
ーー淋しい、なんて、
否定したのが余計にベルの中で"淋しい"という言葉を反復させる。
その時、
「痛っ…」
フランの呻く声が聞こえた。
「あらあら、また切っちゃったの〜?」
「すみませんー」
「いいのよ、ただ無理しちゃダメよ?もう傷だらけじゃない。」
2人の会話にベルはすかさず調理場に入りフランの元へ行った。
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