短編

□サクラサク (前編)
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この桜が咲く頃に、お前をぜってー迎えにいくからな!!
だから、約束だ。
その日までお互い振り向かねえ!







そう彼が言ってくれたのは、三年も前だ。

いくら有言実行だからと言っても、三年間、音信不通なんてあんまりだ。




最後に二人で撮ったプリクラを眺め、むぅ、と唇を尖らせてみたけれど、結局何も変わらない。



約束した桜はもう明日にでも咲いてしまうのだろう。

私は今年もまた一人であれを眺めることになるんだ。






確かに、私達は、お互いの夢のために一度別れを決めた。


それぞれが目指す道を閉ざしたくなくて、何度も泣いた結果、平助は平助の。

私は私の夢を目指すために、遠距離恋愛という糸で繫がることとなったわけだ。




だけど……会えない日々は淋しくて、何度も電話をかけようと携帯電話を開いては、自分を戒めるように唇を噛んだ。



私、まるで私だけが恋焦がれているみたい。
いくらなんでも……あんまりにもひどいんじゃない……??



プリクラで笑う平助を見ていると自然に涙が溢れてきた。

止まらない。

平助への想いが。淋しいという気持ちが。




淋しい。淋しい。

今すぐ会いたい……会いたいよ。







『平……助……』






呟いた声音は、静かな私の部屋で響くだけだった。




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