作品集
□泉での誓い
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“ストーグ・ディエダ・アース、永眠”
満月が見える夜の中、そのニュースは、地球国全体に瞬く間に広がった。
国を背負った名君を失った悲しみ、泣き叫ぶ声が、聞こえるような気がする、とディムス・リュンデルクは思っていた。目尻には、小さな雫が浮かび上がっていた。
「ホント、惜しい人を亡くしたよな……」
「確か、まだ三十代だったっけ?俺と同じぐらいの年齢で、こんな……」
とディムスと同じ階級の男達が、涙を浮かべながら話していた。
「そういや、お世継ぎは、どうなるのだ?」
「確か、エメット様だ。セーラ様は、自ら皇帝候補から身を引いたらしいからな」
「エメット様か……。まだ十二歳だが、大丈夫だろうか……」
「何を言っているんだ!エメット様は幼少時から帝王学を叩き込んでいる。きっと、上手く地球国をまとめてくれるだろう。俺達は、エメット様をサポートする為に、地球国をお守りする義務が――」
「おい、お前達!」
男の言葉を遮るかのように、ドアをバンッと開けたのは、濃い緑色の軍服を着た五十代ぐらいの男だった。
「今すぐ出動だ。エメット様とセーラ様が城を飛び出したのだ!」
「……!?」
男達は目を丸くした。ディムスも同じ反応をし、涙を拭いて後ろを振り向いた。
「今から軍総勢で捜索を開始する。お前達は森の方を頼む」
「はっ!」
ディムス達は敬礼をし、慌てて準備を始めた。
ディムスは机の引き出しから、小型の拳銃を取り出し、ホルスターに入れると、他の男達よりも先に部屋を後にした。
〜*〜*〜*〜
森の中に入っていたディムスは、拳銃を構えつつ、辺りを警戒しながら先を進んでいた。
(エメット様とセーラ様はご無事であろうか。きっと、お父上を失った悲しみで、飛び出したに違いない。お二人は戦う力はあるのは知っているが――今は夜。危険が一杯だ。早く、お二人を見つけなければ!)
ディムスはそう胸に抱きつつ、歩き続けた。
この森は鍛錬や見張りをする時によく訪れる。土地勘もばっちり――なのだが。
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