短編小説
□いんせすと☆
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「いや、そんなこと急に言われても俺が困るんだって!
ってかなんだその彼女いない臭いって!!お前もいないだろ!」
「いるよ?」
なん…だと!?
「嘘だああああ………!!!!」
「嘘。」
「ほら!いねーじゃねーか!!なんで嘘ついた!!??」
「兄貴からかっただけ。あと俺自慢じゃないけど結構モテるから。
彼女は作らないだけ。"作れない"兄貴とは違うの。」
くっそくっそくっそ俺完全に負けてるじゃねーか!!!!
いや、そりゃ俺割とガッチリしてるから女の子にはちょっと怖がられて話し掛けられたりしねぇし、弟の方が同じ狼獣人でも身体つきはスリムだけど筋肉が程よく乗っておまけに顔もイケメンだからモテそうなのはわかるけ…
いやいやいや。ここで負けてたらダメだろ俺。
「と も か く ! ここは俺の家だしせめーんだからお前が寝泊まり出来る場所はねぇ!」
言ってやった。
キッパリ言ってやったぞ。
あんだけバカにされちゃあ少しはカチンと来る。
「…ぅぅ。
俺…兄貴とずっと会って無かったしビックリさせようと思って来たんだけど迷惑…だったよな。ゴメン…。」
うっ……そんな……。
普段全然素直じゃなくて横暴で俺の事なんか全然兄とも思ってなさそうな弟にあからさまにしょげて耳までぺったんこにして今にも泣き出しそうな顔をされると俺も心が痛い。
こんな可愛い弟がわざわざ短い期間だけど会いにきて一緒にいたいなんて思ってくれてるのに俺は…。
「わっ、悪ぃ。そんなつもりじゃなかったんだよ…。
せめぇし一緒に寝るしかねぇけどそれでもいいならいてもいいからよ?メシもそれなりの食わしてやっからよ?
だから落ち込むなって…な?俺もずっと会ってなかったから実は会いたいと思ってたしよ…」
そう、お分かりの通り俺は弟にベタ惚れだ。世間で言うブラコンってやつだろう。それも相当重度の。
ただそんなことどうでもいい位に弟が可愛いんだ。来た時はビックリしたし、さっきから距離が近いせいでドキドキしっぱなしだ。さっきバカにされたけどもそれでも好きだ。久々に会って心臓バックンバックンだし、目の前にいる弟の鼻腔を擽る懐かしい匂いが俺を昂らせる。制服姿が可愛すぎてここで襲っちまいたいくらいだが多分そんなことしたら完全に引かれて帰っちまうかもしれねぇ。って抑えろ俺。