短編小説

□はじまりの場所
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キーンコーンカーンコーン‐

いつも通りの予鈴の鐘…って言い方は古いから、チャイムが鳴るが周りの奴等はクラスのヤツと喋ったりケータイ弄ったりしていて席に着く気配が一向に無い。
かと言う俺もそんな一人だったりするが。

「煉、今日ゲーセン行こうぜ?」

[あ、ゴメン。俺、今日バイトあるんだ…。]

そういつもよく遊ぶツレにそう返す俺。

煉ってのは俺の名前だ。
大崎 煉(おおさき れん)。
榛央都大(しんおうとだい)高校2年A組、現在彼氏募集中の身長173cm体重65Kg、銀色の変わった毛色の17歳の狐獣人だ。

ちなみに俺の通っている高校は私立男子校だ。だからって訳でもないが、やたら男好きが多く、教室には雄同士でイチャつく光景も日常茶飯事だ。
いいなぁ…。俺もカッコイイ彼氏欲しいなぁ。

だけど、自分で言うのも何だが俺はモテる方だと思う。
1年の時はクラスの奴らに何度も告られたし(全部断ったが。)、昨日だって昼過ぎに後輩の1年に呼びだされて学校の体育館裏っていうベタな場所で告白された。そりゃかなりの美形の猫獣人で、1年の中でも人気の高い生徒だったらしい。

らしいってのは、教室に戻ってからツレから聞いた話なんだけど。

だが、もちろん断った。
ツレからは「なんであんなカワイイ子からの告白をすぐにOKしなかったんだよ!」ってデカイ声で言われたのを憶えている。
たしかに可愛らしかった。ケド、俺が欲しいのはカッコイイガタイの良い彼氏なんだ。
カワイイのは目当てじゃねぇんだ。

キーンコーンカーンコーン‐

そんな事を思っていると本鈴が鳴り、周りのザワザワしていたのが無くなり、席に着きだす。
ホントだったら6限なんて一番かったるい授業の筈なんだけど、今日は違う。
だって…

ガラガラッ‐

「ホラ、はよ席座りやー。始めんで。」

といつもの喋り方で教室に入ってきたスーツ姿の人物は俺のクラスの担任であり、数学の担当教師でもある五十嵐 航哉(いがらし こうや)先生、黄色に黒のブチの豹獣人の22歳だ。

先生は今年からこの学校で教鞭を持つことになったらしく、去年までは別の地方の大学に行っていたらしい。
だから先生の喋り方は結構特徴的だ。まぁ、俺もこの3カ月で随分慣れたけど。

あと、特徴的って言ったら体の特徴かな。
数学教師とは思えないほどのガタイの良さで、それでいて豹獣人特有のスラッとした体を持つ、まさに俺の好みドストライクの先生だ。しかも人懐っこくて生徒にも慕われて、去年の数学教師になんて比じゃないくらい教え方も上手い。
俺も去年までは数学は苦手科目だったけど、五十嵐先生の登場で今じゃ得意教科になっている。ホント先生にはマジ感謝だよ。

はぁぁ、、先生今日もカッコいいなぁ…。
でもなぁ…生徒が先生に恋して結ばれる..なんてエロゲーや携帯小説じゃあるまいし・・・ってな訳で俺は先生に告白できずにいる。

「えと…じゃぁ今日は三角関数やね。
君等は確か去年三角比って勉強したんやと思うんやけど、どうやろか。憶えてる?」

そう授業を始めていく先生。
三角比…? ぁあ、あれかサインコサインタンジェントってやつか。もう忘れちゃったな。言葉だけしか憶えてねぇや。
去年の先生は教え方が下手だったから全然分かんなくて、あの時のテストは悪かったなぁ;;
だってクラスの平均が欠点だったしなっ。

だからそんな授業内容だったから憶えているヤツもほんの少数で、先生の問いにはポカーン状態だった。

「うーん。その様子やと完璧忘れてるなぁ;;
まぁ、一から説明するわ。そっちの方がみんな思い出してくれると思うし…。」

そう言って黒板に直角三角形を書きだし、
斜辺分の高さはsinθで、斜辺分の底辺はcosθ、底辺分の高さはtanθとそれぞれ筆記体のs,c,tを書くように指で差しながら説明してくれた。

...あぁ。あったなこんなの…。

そんな感じで俺達に去年の事を思い出させるようにして授業を進めていく先生。
あーマジカッコイイよぉ。先生、愛してるっ。
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