短編小説

□出会いは案外近くにあって・・・
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カランカラン-

『いらっしゃいませ。』

「カウンター空いてるかな?」

『ええ、お好きな所にどうぞ。』

俺は店に入って来た何時もの常連さんを迎える。
40手前の獅子獣人でその和やかな笑みが特徴的だ。

「では失礼するよ。」

ガタッ...

俺は少しくたびれたスーツの上着を預かりハンガーに掛け、クローゼットに入れる。

『何時もので宜しかったですか?』

「いや、今日は[アイスホーン]のロックで。
コウくんが可愛いから奮発するよ。」

『ハハッ...;
かしこまりました。』

カタッ

コポコポコポ...

キンキンに冷えたグラスに氷をピックで割って入れる。
そしてお酒を注ぐ。

あ、コウくんってのは俺の名前だ。
雲雀丘 紅河 (ひばりがおか こうが)

それが俺の名前だ。ここにくるヒトはたいてい俺の事をそう呼ぶ。
歳は18の黒の狼獣人で大学生だ。

そして状況を察してもらうと分かると思うけど、俺はバーでアルバイトしている。

ガラガラガラガラ....

そうして慣れた手つきでマドラーで軽く混ぜて、お客様に提供する。

コトン、、カランッ..

『お待たせしました。』

「うん。有難う。
それにしても随分上手になったね。」

『ヘヘッ。 有難うございます。』

俺がここに入って既に半年以上が経っている。
このヒトは俺がここでバイトを始める前からの常連さんで、入りたての頃の俺を良く知っている。

「最初の頃なんて良くお酒ひっくり返したりグラス大量に割ったりしていたもんね。」

『そっ、それはもう無かった事にして下さいよぉ。』


入りたての頃はそりゃひどかったが今ではもう随分と慣れたモノだ。
常連さんがどのお酒好きかなんかは完全に把握している。

ゴクッ...

『それにしても...[アイスホーン]を頼まれるという事は何か良い事でもあったんですか?』

このヒトがいつものじゃなくて少しキツイ目のお酒を選ぶ時は大抵何かいい事があった時だ。

「うん。そうなんだよ。
今日、私の務めている会社の社長になっちゃったんだよ。」



・・・え。

マジっすか。

『えっ!?
凄いじゃないですか!?おめでとうございます!!』

「有難う。コウくん。
君に祝って貰えると嬉しいよ。」

前々からどっか大手のエライさんとは聞いてたけど...
社長って...。
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