短編小説

□はじまりの場所
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あー..でも、先週隣のクラスの奴が先生に告ったて言ったよなぁ。
確か..萩芳だったっけ?
でも
「ゴメン。気持ちは有り難いけど、俺、好きな人おるんやわぁ。だからごめんなぁ。」
ってフラれたらしい。

最初隣のクラスのヤツが五十嵐先生に告ったって言う噂が流れてきたときには俺はリアルに頭が真っ白になった。
だってあの五十嵐先生が俺と同じ学年の奴と一緒に手を繋いでるなんて..無理だろっ!!って思った。
俺のプライドが許さなかったなぁ。まぁ、俺、告白すらしちゃいないんだけど;

でもそのあとフラれたっていう情報が回って来た時には正直ホッとした。・・・萩芳には悪いけどな。

でも、誰だろうな先生が好きな人って………。
ハァァ、、、やっぱり俺にとっては先生は高嶺の花だな。
先生は俺みたいな高校生のガキを好きになる筈なんか無いしなぁ・・・
それにノンケって可能性もあるしなぁ…。

「大崎クーン? どしたん? ボーっとして。」

ゲッ!! 
そんな事を考えていたら先生がいつの間にか俺の真ん前に立って、俺の顔を覗き込んでいた。
って…顔近い…////

[あ、イヤ..。何も無いです。 スミマセン・・///]

「うそん?。顔赤いで?熱でもあるんちゃう? ちょとゴメン..」

ピトッ‐

[ッ!!///]

あろう事か先生は俺と先生のおでこをくっつけて熱を計ってきた。
ヤバッ..もうキス出来そうな距離だぞ??

俺の心臓はさっきからうるさいぐらいにドクドク鳴って、緊張を隠せずにいた。
先生っ!恥ずかしいから離れて…いやっ、ずっとこのままでいてほしいっ………….

「ん〜。熱は無さそうやな。
せやけどしんどかったら言いや?保健室行ったらええからな。」

[あ..はい///]

赤くなったのは先生がそんな事するからだろ。。////
ハァ、あんな事を平然とやってのけるって事はやっぱ俺には先生にとってただの生徒の一人としか見えてないんだろなぁ…。

俺は少し落ち込みながらも大好きな先生の授業だから、それからは最後まで真剣に聞いた。
お陰で今日進んだところは完璧に憶えた。
去年までは数学はテスト前に無理矢理詰め込んで憶えてたけど、五十嵐先生が言うには「一回一回でカンペキに憶えていく方が最後テスト前パラっと見返すだけでええから、テスト前に必死になって憶えるより楽なんやで?」らしい。
俺は半信半疑でそれを実践してみたら驚くほど楽で、去年の暗記地獄が嘘のように思えた。
だから俺は先生が言った方法で一回一回でコツコツと憶えていっている。

キーンコーンカーンコーン‐

「あ、鳴ってもうたか。じゃ、このままHR始めんで。
えーと今日の掃除はA班とE班で日直は大崎クンと大坪クンやね。
ちょっとゴメンやけど、俺用あるから職員室おるけど、日直は日誌持ってきてな〜。
じゃこれでHR終わり。
ほな、さいならっ。」

と、いつも通りの軽快な挨拶で締め、教室を後にする先生。
HRの時間が短いのも先生の人気の一つだ。
先生曰く「そんなしょうもない先生の話聞くより、はよ帰りたいやろ?」らしい。

俺は先生の話ならずっと聞いてても良いんだけどなぁ..って俺、今日日直か。そんなこと言ってる場合じゃねぇや。仕事しないと仕事!
俺はどっちかって言うと活発な方だが、決められてることはちゃんとするし、学校で問題事は起した事がない。

でも、日直ってめんどいんだよなぁ。
掃除当番終わるまで待たなくちゃいけないし、黒板消す作業めんどいし、日誌は…大坪が付けてくれてるみたいだな。

俺は日誌を書いてもらっている間、黒板消しで先生が書いた黒板の字を消していく。
うわっ。この黒板消し汚っ。誰だよ…昨日日直のヤツ..帰りにあのチョークの粉吸い取るアレかけなかったろ。。。
昨日って言えば俺の一個前だから..江原か、、、アイツっ!!

確か「うわっ。今日日直かよっ;ゆーりんのライブ間に合うかなぁ…」って心配してたな。
因みに「ゆーりん」ってのはたしか「吉原 優香」っていう人気アイドル歌手の「C★J」とか言うグループの一番人気のあるアイドルらしい。
俺には全く興味ねぇけどそいつにとっては一大事で、多分日直をテキトーにやって急いで帰ったんだろなって予想は付く。

[ったくよぉ..。     アレ…??]

俺はこのままじゃまた黒板を汚す事になるから、仕方なしに教室の端にある黒板消しのチョークを吸い取るアレに近づくと床にハンカチが落ちてあった。

・・・コレ。。もしかして..もしかしなくても先生のじゃん!!

先生はいつも仕事上チョークが手に着くから、手を拭く為にハンカチを常備している。
どうして俺がすぐに先生のハンカチかって分かったかって?
なにせこのハンカチは俺が先生の誕生日にプレゼントしたヤツだからなっ!

渡した時に先生は「うそん?マジで俺にくれんのん?  いやぁ..めっちゃ嬉しいわぁ。こんな会って1カ月のただの教師にプレゼントくれるなんて・・。
俺、絶対大事にするからなっ。」
そう言って、喜んでくれた先生の笑顔を今でもしっかりと憶えている。

いや..俺も嬉しいよ。先生。
まさか本当に大事に使ってくれていたなんて・・・。

俺はハンカチを拾い上げてズボンのポケットに突っ込む。
あとで日誌のついでに渡しに行こうっと。

さぁ、黒板消し頑張るかっ!
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