×白雪姫
□第2章
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「ヌメーレ湿原、通称、詐欺師のねぐら。二次試験会場へはここを通って行かねばなりません。
この湿原にしかいない奇怪な動物達。その多くは人間をも欺いて食料にしようとする、狡猾で貪欲な生き物です。十分に注意して来てください。
騙されると死にますよ」
サトツの言葉に白雪は息を飲む。
自分自身が一番気づいているのだ。
騙されやすい人間なんだと。
『君以外にそこまで騙される人間なんて見たことないね』
脳裏にある時の、鏡の言葉が過ぎった。
「(大丈夫だ、騙されるとわかってて騙される訳ないからな!)」
「騙されるな!!!」
「え!?」
その場にいた受験者達は後ろを一斉に振り返る。
物陰から出てきた男は傷だらけだった。
「そいつは……嘘をついている!!!!!」
「……!?」
「そいつは偽物だ!試験官じゃない!俺が本物の試験官だ!」
受験者はざわめき両者を交互に見る。
「これを見ろ!」
男が引っ張り出してきたのは、顔がサトツによく似た「人面猿」という猿だった。
「人面猿は新鮮な人肉を好む。しかし、手足が細長く、非常に力が弱い。そこで、自ら人に化け、言葉巧みに人間を湿原に連れ込み、他の生物と手を組んで食い殺す!」
「サトツさんって……猿なのか!?」
「いや、そこなのか…」
白雪の発言にクラピカが冷静に突っ込む。
その直後。
ドスッ!!!
男の体に目にもとまらぬ速さで、トランプが突き刺さり倒れる。
サトツにも同様にトランプが投げられるが、簡単に手で受け止めた。
「なっ!?」
刺さった男は起き上がる気配がない。
「(まさか、死んでる…のか!?)」
「そっちが本物だね」
44番の男は手元のトランプを混ぜながら言った。
「お、おい。クラピカ…44番の…あいつ何なんだ」
「奇術師ヒソカ、去年もハンター試験に出ていたが気に入らない試験官を殺し、失格になったそうだ」
「…何で…簡単に、殺せるんだ…」
「…………」
「(彼女にハンターになりたい理由を言えばどう答えるのだろう……)」
クラピカは心の中で思った。
その出来事の後、すぐに試験は再開され、ヌメーレ湿原を走る。
白雪はさっきと同じで、ゴンとキルアと共に走る。
「………」
「…?どうかしたのか?キルア?」
「……もっと前に行こう」
「あぁ」
「うん、試験官を見失うといけないもんね」
「そんなことより、ヒソカから離れた方がいい。アイツの側にいるとやばいぜ…、ニオイでわかる」
「「ニオイ?」」
「あの44番、臭うのか?」
「意味が違う」
「……いや、ジョークだ。それくらい分かってたぞ、私は…うん、それくらい…」
キルアは呆れた目を白雪に向けるが、ゴンはなんのことかは分からず、大声で後ろを走ってるクラピカとレオリオに前に来いと言う。
しかし、ゴン達の体力は異常な為、追いつける訳がない。
仕方なく先に行くことにした。
「なぁ、さっきから、あっちこっちから悲鳴が聞こえるんだが…」
「油断するなってことさ」
「レオリオとクラピカは大丈夫かなぁ」
「心配になるな…」
ブニュッ
「ん?」
「どうした?キル…わっ!?」
「「ああああああ!?」」
走っていた地面がなくなり、一気に暗闇になった。
彼らもまた、ヌメーレ湿原の奇怪な動物に襲われたのだった。
「イってー!」
「何だコレ…何かの体内か?」
「食べられたの!?」
「だ、大丈夫だ、多分、刺激したら戻してくれるだ……っておい!キルア何してる!?」
「ん?刺激?」
ウェェエエエエエエエエエ゙ッ
キルアの持っていた缶ジュースのおかげで、別のものと一緒に外に吐き出された。
「ゔ〜…お風呂入りたい…」
「確かにな…それより速く行こうぜ、今ならまだ間に合う」
また、3人は走り出すがゴンは立ち止まり、来た道を引き返した。
「(…?あれ?ゴンがいない…)」
白雪もその異変に気づき、ゴンの後を追った。