×白雪姫
□第0章
3ページ/7ページ
髪に付いた汚れを落とし、井戸の縁(フチ)にカゴを置き、その隣に白雪は座っていた。
「何だ、またやられたんだ」
さっきまで居なかった男が、
いきなり目の前に現れた。
「鏡……」
黒一色で仕立て上げられた服、
髪も片目が隠れた少し癖毛のある黒髪。
全てが黒く、
何物にも染まらない。
そんな男だ。
彼は、黒い目を細め、
白雪を見下げ、言った。
「君も懲りないね、一体何度目だとおもってるんだ?」
「……今日は小人(ドワーフ)の所に行って、ジャムと果物貰ったんだ、ドクがこれをジャムにすると美味しいって……」
白雪はカゴから熟した果実を取り出し、鏡に差し出す。
鏡はそれを手にとり、簡単に片手で潰してしまう。
「会話がなりたってないよ。
その果物、今日、君に投げつけられたモノと同じだ。」
鏡は冷めた目で座る白雪を見下す。
「…きっと今が収穫時なんだな」
ヘラリと力なく白雪が笑う。
「もういいよ、それ」
「え?」
鏡は白雪に近づき、彼女の顎をを果実でベタベタの手で固定し、強引に上を向かせた。
「君はいつもそうやって笑う、何故だ?嫌だと思うんだろ?」
「…思うけど」
「なら、やり返せばいい」
「そ、それは駄目だ‼」
「……何故だ?」
「あの子は…投げつけてきた子は本当はスゴイ、いい子だと思うし…、いつかは、いつかはきっと仲良くなれる‼」
「馬鹿だ」
「ば、ばか…って」
「じゃあ、君はいつかは王妃と…自分の母親と仲良くなれる日が来ると思ってる?」
「…くる、と思う」
「…それは、王妃様は本当はいい人と思ってるから?」
「……いい人だ」
「ふーん…君、一度も愛されたことないのに」
「……本当は、凄い優しい人なんだって、私は…」
「それイライラする」
「え?」
「俺が代わりにやろうか?君がしないなら、俺が代わりに街の子供も王妃も、その他の人も殺る」
「…それは、駄目だ‼」
「君、もうちょっと現実見た方がいい、君の思ういい人は世界に数えれる数しかいない」
「でも、それでも、私は…信じたいんだ」
「…………」
鏡はため息をつきながら、白雪から手を離す。
「王妃が呼んでる」
「………」
「顎の汁洗っとかないと知らないから」
そう言い残し、鏡は姿を消した。