×白雪姫

□第0章
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髪に付いた汚れを落とし、井戸の縁(フチ)にカゴを置き、その隣に白雪は座っていた。



「何だ、またやられたんだ」



さっきまで居なかった男が、
いきなり目の前に現れた。





「鏡……」






黒一色で仕立て上げられた服、
髪も片目が隠れた少し癖毛のある黒髪。



全てが黒く、
何物にも染まらない。



そんな男だ。





彼は、黒い目を細め、
白雪を見下げ、言った。





「君も懲りないね、一体何度目だとおもってるんだ?」

「……今日は小人(ドワーフ)の所に行って、ジャムと果物貰ったんだ、ドクがこれをジャムにすると美味しいって……」





白雪はカゴから熟した果実を取り出し、鏡に差し出す。

鏡はそれを手にとり、簡単に片手で潰してしまう。





「会話がなりたってないよ。
その果物、今日、君に投げつけられたモノと同じだ。」



鏡は冷めた目で座る白雪を見下す。





「…きっと今が収穫時なんだな」



ヘラリと力なく白雪が笑う。





「もういいよ、それ」

「え?」





鏡は白雪に近づき、彼女の顎をを果実でベタベタの手で固定し、強引に上を向かせた。





「君はいつもそうやって笑う、何故だ?嫌だと思うんだろ?」

「…思うけど」

「なら、やり返せばいい」

「そ、それは駄目だ‼」

「……何故だ?」

「あの子は…投げつけてきた子は本当はスゴイ、いい子だと思うし…、いつかは、いつかはきっと仲良くなれる‼」

「馬鹿だ」

「ば、ばか…って」

「じゃあ、君はいつかは王妃と…自分の母親と仲良くなれる日が来ると思ってる?」

「…くる、と思う」

「…それは、王妃様は本当はいい人と思ってるから?」

「……いい人だ」

「ふーん…君、一度も愛されたことないのに」

「……本当は、凄い優しい人なんだって、私は…」

「それイライラする」

「え?」

「俺が代わりにやろうか?君がしないなら、俺が代わりに街の子供も王妃も、その他の人も殺る」

「…それは、駄目だ‼」

「君、もうちょっと現実見た方がいい、君の思ういい人は世界に数えれる数しかいない」

「でも、それでも、私は…信じたいんだ」

「…………」





鏡はため息をつきながら、白雪から手を離す。





「王妃が呼んでる」

「………」

「顎の汁洗っとかないと知らないから」





そう言い残し、鏡は姿を消した。
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