×白雪姫

□第9章
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「ちょっと、聞いてる?」

「聞いてる!」






夜になっても4人でしゃべり続けたシラユキに悲劇が起きた。


脱走した病院からハンター協会に電話があったのだ。


試験官はやっぱりと納得した。


病院服を着て会場に戻ってきているという時点で、
“まさか”とは思っていたが、脱走していたとは。


試験官の内の一人、メンチはその報告を聞き、
呆れながら脱穀者がいる部屋に赴き、
危機を感じ逃げ惑うシラユキを一撃、
簡単に病院に戻したのだ。


そして治療に専念しながら、メンチに
ライセンスカードについて色々教えて貰っているのだ。





「便利なんだな、ライセンスカードって」


「ハンターになったものしか手に入れることの出来ないカードよ、
ハンターになったんだから、
無くしたってハンター試験は受けることが出来ないからね」


「わかった」


「はい、じゃあこれ」






メンチは持ってきた紙袋の中から
丁寧に保存されたライセンスカードを出す。





「ハンター試験合格おめでとう」

「…あ、ありがとう」




これを受け取ると完全にハンターになる。


恐る恐るメンチの手から
ライセンスカードを受け取る。





「本音言うとさ、
アンタ、絶対始めに落ちると思ってた」


「失礼だな」


「だってさ、細っこいし、
頭悪そうだし、力もなさそうに見えてね」


「ひどい…」


「でも、意外に体力あるし、度胸あるし、
戦闘経験もついてるし驚かされたわ」


「メンチさん…」


「あ、そうだ。アンタ、念能力者?」


「ねん?」


「違うの?
アンタ、自由自在にオーラを操ってたじゃない」


「おーら?」


「違うなら別にいいわ、忘れて頂戴」


「………」


「今日の夜、パーティーあるから。
ちゃんと来なさいよ」


「え、でも、入院…」


「医者は異常なまでに回復が早いって。
暴れなきゃ、外に出てもいいって言ってたわ」


「本当か!?」


「嘘ついてどうするのよ」





メンチは長い説明をようやく終え、
取り出した資料などを持ってきた紙袋にしまい始める。


そして、袋が満タンになると
座っていた席を立ち上がる。





「帰るのか?」

「えぇ、あなたに会いたい人もいるみたいだしね」

「?」





メンチは扉に近づき、思いっきり引いた。


そして、外から聞き耳を立てていた人が、
扉という支えをなくし、中に雪崩るように入ってきた。





「レオリオ、何やってるんだ」

「よ、よぉ!シラユキ!」





盗聴していた犯人はレオリオだった。


そして、後からクラピカが入ってくる。


どうやら、盗聴していたのはレオリオだけだったらしい。


メンチはレオリオに冷めた視線を浴びせると、
そのまま部屋を出ていった。





「レオリオへんたーい」


「シラユキ…お前、
最近、毒舌キャラになってんぞ」


「まぁ、レオリオが悪いんだから仕方ないだろう」





見舞いに来てくれたのは二人だけで、
もう一人、ゴンの姿がなかった。


聞いたところ彼もまた、シラユキと同じように、
ライセンスカードの説明を受けているらしい。


ゴンはハンゾーとの一戦以来、ずっと気絶してて
ライセンスカードの説明を受けていないそうだ。





「シラユキは退院出来るのだろう?」

「いつでもできるぞ」





だって、荷物は鞄だけだからな。

服は後から返せば問題はないらしい。





「っていうか、今すぐにでも退院したいんだけど…」

「だろうな、担当医呼んでくる」





レオリオがそう言い、足速に病室から出る。





「今日が、皆と過ごす最後の一日になるんだよな」





シラユキはため息混じりに、
思っていたことを吐き出す。


今日のパーティーが最後。


明日には皆それぞれ別の道を行く。





「なんか、寂しくなるな…」





色々なことがあって、ハンターになったけど、
なんだかんだ言って、ハンター試験の最中が一番楽しかった。





「これで、本当にお別れって考えると悲しいな」





本音を口から零す。

言った所で何も変わることはない。



あの死ぬ程長い距離を走る持久走をしている最中にも、
ゆで卵を作るために深い谷底に飛び込んだ瞬間にも、
プレートの奪い合いにだって時間が戻る訳じゃない。



ただ、溢れる想いを言葉にしただけだった。





「依存してるな、私」





他人に。





 
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