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□長編 ある本の虫の女の子
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まだ、寒さの残る季節。

ユナは、ひとつ伸びをして、まだ暖かさの残る布団を出る。

衣装棚からチマとチョゴリを手に取り、着替えた。

髪を結いながら、部屋を出、炊事場へ向かう。そこでは、使用人のジュンギ朝餉の支度をしていた。

「おはよう。ジュンギ。」

「あ、お嬢。おはようございます。」

「男のくせに、包丁使いがうまいわねぇ(笑)」

「そうですねぇ。(笑)お嬢よりは得手だと思います(笑)」

ユナは、笑いながら、ジュンギの肩を優しく叩いた。

「一言多い!(笑)」

パク・ユナ

齢21。女性にしては長身で、ハツラツとした笑顔が印象的な活発な女子。
父は、三醫院、内医院に勤める医師である。
母は、ユナを生むのと引き換えに命を落とした。

それから彼女の身の回りの世話は、ジュンギの母親が請け負っていた。

その母親も、10年前に亡くなり、今では、その息子。ジュンギがパクの家事、雑用を引き受けていた。

ユナとジュンギは幼少時より、常に一緒にいた。故に、主人と使用人ではなく、兄弟に近い関係を築いていた。

「今日の朝食は何?」

「お嬢は、献立など関係ないでしょう?いつもおいしそうにたくさん召し上がる。でしょ?」

「まぁね(笑)」

ユナは、皿にまだ盛っていないナムルをひとつまみ口に放り込んだ。

「あ、やめなさい!はしたない!」

「ジュンギ、オモニに似てきたね(笑)」

「そうですね。父には似たくありませんので。」

ジュンギは悲しそうに笑う。

コン・ジュンギ。
齢22。長身の切れ長の目が涼しげな、しかし、笑顔の優しい青年。
母は、10年前に病気で他界。父は、彼が母の胎内にいるときに、駆け落ちをした。似たくない理由はそこにある。

「とにかくお嬢。手伝うのか、待つのか、どちらかに願います。」

「わかったよ。じゃあ、米の様子でも見るか。」

こうやって、パク家の一日が始まる。



朝餉の後。ジュンギは、主人、つまり、ユナの父の部屋に赴く。

「失礼いたします。」

「おぉ、来たか!入りなさい。」

「はい。失礼いたします。」

ジュンギは、丁寧に襖を開け、中に入る。

「さて、始めるか。」

父は、ジュンギに学問を教えていた。
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