お題小説

きだって、素直に言えたら
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いつも思う。

どうして俺は、素直に好きって言えないんだろうかって。

「小野寺・・・好きだ」

高野さんが俺の耳元でそう囁く度、俺の心臓がどくりとはねる。

「高野さん・・・」

俺も、高野さんの事が好きです。

そう言いたいのに、俺は高野さんの広い背中に両腕を回す事しか出来ない。

思い切って言おうとすると

不安

躊躇い

恐れ

そんな気持ちがない交ぜになって、俺の邪魔をする。

また傷つけられたらどうするんだって、過去の自分が泣いている。

・・・そんなの、もう起こり得ないのに。

「小野寺・・・お前は?」

認めなくないけど、そんなの決まってる。

「俺、は・・・」

けど、いくらそれを言葉にしようとしても上手く口が動かない。

「えっと・・・その・・・」

好き。

このたった2文字を言うだけなのに。

声が、出ない。

何も言えない俺を見て、高野さんは

「今は無理しなくていいから」

いつか、お前の口から聞かせて?

と、俺の頭を撫でて何でもない事の様に言ったけど、その表情に陰りがあったのを俺は見逃さなかった。

「・・・すいません」

こんな事を言っても高野さんを困らせるだけだって分かっていたけど、そう言わずにはいられなかった。

こんな俺を、高野さんは許してくれるだろうか。

この気持ちはまだ素直に言えないけど、もう少しだけ、傍にいてもいいですか。

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