長編
□あちらとこちらの連理共鳴2
4ページ/8ページ
【仁王サイド】
歯磨きが終わり、みんなで車に乗り込むが、菓子の匂いが充満しとる。
丸井のせいじゃが、これは丸井に菓子を与える静芭姉と呉芭姉にも原因があるのぅ。
静芭姉と呉芭姉は簡単に化粧をしとるが、ナチュラルで素っぴんと大して変わらん。
「シートベルト全員付けたね」
青いシュシュで髪を纏めた静芭姉が、車のエンジンを掛ける。
車は山道を走り抜け、大きな通りに出る。
音楽はない。
代わりにラジオのニュースが流れてとる。
「トイレとか、酔ったとか、何かあったら言ってね〜」
呉芭姉が携帯を弄りながら言う。
昨日、二股だの言っていたから、もしかしたら彼氏とかもしれん。
町並みを眺めていれば、知らないながらも俺たちがいた場所と、変わらん。
何故家や立海がないのか、とてつもなく不思議な程に。
とは言え、念のため持ってきた携帯は、相変わらず圏外。
呉芭姉が使ってるんじゃき、圏外と言う事はない筈じゃかのぅ…。
同じ事を思ったらしく、ジャッカルも携帯を弄りながらため息を付いとった。
起きた時は全て夢だったら、と、初日の夜は思った。
今も思わんでもないが、初日よりも遥かに気は楽じゃ。
ここにいたメンバー全員がそうじゃろうがな。
大袈裟ではなく、呉芭姉と静芭姉がいなければ死んどったかもしれんし。
人間、飯を食わんと死ぬ。
海に行くまで、散々言い争いもした。
普段喧嘩なぞ余りしない柳と真田が怒鳴りあう位にのぅ。
運転席を見れば、長い指でハンドルを操作する静芭姉と、相変わらず携帯を見とる呉芭姉。
二人が拾ってくれた事に、本気で感謝じゃ。