長編

□あちらとこちらの連理共鳴2
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【幸村サイド】





静芭姉さんが世話になってるという寺へ行く。

その後、他の寺、神社、占い師。

様々な場所で聞いてみたが、結果は全て同じだった。

「こうなったら、それを信じるしかないね」

全く同じ答えと言うなら、そうなのだろう。

俺は、解決法が見つかって酷く安心した。

全身の力が抜けるのが分かる。

「一月後、坂の上の丘公園で、か」

坂の上の丘公園は実在している。

静芭姉さんが、カーナビで調べてくれた。

半年は長いらしいが、時間軸は変わらない。

つまり、元の場所に戻る時は、半年間過ごした時間は無かった事になるらしい。

記憶が無くなる訳ではないと言う事もいわれた。

「でもさ、一月は微妙だよね」

「確かに」

呉芭姉さんと静芭姉さんが、真剣に議論している。

言うまでもなく、俺達を考えてだろう。

自分たちの生活より、俺達を優勢する。

何となく、そんな気がした。

「私、明日仕事を1ヶ月休む」

「うん、お願い。私は休めないからなぁ」

「待ってくれ、静芭姉さん!」

静芭姉さんが俺を見るなり苦笑した。

「俺達の為に仕事を休むなんて、って所かな」

考えが読まれている。

「大丈夫。私がいなくても回る。1ヶ月ならクビにはならないよ。収入も減らない」

そんな会社がある訳がない。

そんな事、俺でも分かる。

「静芭姉さん、」

「大丈夫だよ、精市君。…そうだね、私が社長みたいなものだから。飾りだけど。こう説明すれば安心かな?」

一瞬、静芭さんが真顔になった気がしたけれど、今はいつもの様に笑ってる。

「そういうコト。だから家もデカイし、お金あるんだよ」

呉芭姉さんは、携帯を弄りながら笑っている。

そうか、飾りの社長ならそういう事もあるかもしれない。

「さて、1ヶ月もあれば、勉強出来るね。中学生諸君、勉強道具は持って来たかな?」

「え、何それ。マジでやんのかよぃ!?」

「当たり前でしょう。学校は行かせられないの。私が勉強教えるから。学校の本分は勉強でしょう?」

静芭姉さんは、呆れた様に丸井を見る。

「静芭さん、申し訳ありませんが、おそらくまともな勉強道具は誰も持って来ていないかと」

弦一郎が申し訳なさそうに呟いた。

確かに、テニスの合宿だったから着替えこそありはすれ、きちんとした勉強道具はない。

それはみんな一緒だろう。

「そうか。なら、本屋で購入しましょうか。そちらの勉強とこちらの勉強に相違があるかもしれない。参考書の中身は確認してね」

「何から何まで、申し訳ありません」

弦一郎が眉を下げた。

「いいよ。私が決めたのだから、君達は甘えてくれればいい。教えるの、好きなんだよ」

「あと、テニスも」

静芭姉さんを見て、俺は言った。

テニスだけは、絶対やりたい。

1ヶ月も出来ないなんて、絶対鈍る。

「うん。うちの福利厚生の施設にテニスコートあるから、そこを使おう。多少離れてるけれど、車を使えば時間は掛からない」

「あ、でも確かあそこ、殆ど使ってないよね。手入れと掃除しなきゃじゃない?」

「若い子にやらせる」

「俺達がやるよ。俺達が使わせてもらうんだし」

ね?とみんなを見れば、みんなが頷いた。

ただでさえ世話になっているから、出来る事は自分でしたい。

「そう?じゃあ頼むから。鍵を持って来なきゃね」

静芭姉さんは、ふわりと微笑む。

テニスも出来る。

一月なら、何とかなる。

地区予選を控えている以上、やれる事はやらなくては。

いくら時間軸が違って、もとの時間帯に戻れるとは言え、妥協は許されないのだから。
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