長編
□覚醒2
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「悪いな、折角応援してくれたのに」
「いえ。お力になれずすみません」
「一回静芭とやったが、未だに攻略法が分からないしな」
私は目を伏せた。
「静芭」
天根君の声で、再び目を開ける。
「今の静芭なら、何をやられると辛いんだ?」
「…神速舞歩が完成した今なら、強い打球か、綺麗に回転の掛かったボールです。が、相手は力もテクニックある」
思い付かない。
「…そうか」
左右に振るにしても、そうと分かったら相手は正面を変えればいい。
と、なれば、こちらも打球を変えなければならない。
見守るしか、出来ない。
私はまた唇を噛んだ。
試合が終わる度に、相手の勝利が増えていく。
初戦から6-0、6-2、6-0、6-1。
佐伯さんの試合ですら、苦戦している。
オジィさんのアドバイスて、佐伯さんが微笑む、その瞬間。
「っ!」
ボールがオジィさん目掛けて飛んだ。
なんて事!
オジィさん狙って来るなんて…!
反射的に駆け寄り、兎も角冷やす事にした。
幸い出血は見られないが、お年を召してある。
脳震盪の可能性もあった。
「担架!病院に!」
叫べば運ばれてきた担架に、私はオジィさん抱えてそっと乗せた。
戻ってくれば、既に青学の試合が開始されていた。
「止めなさいよ、青学諸君!ここにいる皆さん沖縄武術の心得があるからね」
「やってみなさいよ!」
私は高らかに叫んだ。
「武術経験者が、未経験者に暴力。試合所じゃなくて警察沙汰ね」
相手を睨みつつ、一歩ずつ近付く。
短慮な一人が私を殴ろうとした。
それをいなして、相手を地面に這わせる。