長編
□覚醒2
4ページ/9ページ
「お馬鹿さん」
本当は殴らせても良かったが、兄さんの視線が怖かったりする。
「決着は、テニスで。ね?私も試合かるし、怪我したくないし」
言って相手から離れる。
睨まれたから、睨み返した方がいいだろう。
殺気付きで。
「っ!?」
怯む相手だが、私は兄さんの咎める視線に怯んでしまった。
「良かったね、私が武術経験者で。でなければ、そっちは試合どころではないよ?」
言って、相手を解放する。
更に私にボールが飛んで来たが、それも素手で受け止めた。
ぬるいボールだから出来た。
これがレギュラーだったら、無理だろうけど。
また適当に返して、ミーティングがある私は踵を返した。
ミーティングが始まる時間になり、私はしょんぼりしながら集合場所へ向かう。
「どっちかと当たるんだからね」
そう言われて、熊谷第三と御矢本第一の試合観戦。
「手塚、落ち着いたら?男子は勝つよ?」
「分かってますよ!ただ、兄さんの試合が…」
「あんた、どんだけお兄さん子なんだよ」
そう言うが、アリアもソワソワしてる。
「氷帝男子は5-0勝ち?」
「聞くまでもないしょ」
と言う事は、そうなのか。立海男子も5-0だろう。
「うーん。ダブルス1に双璧入れてよさそうね」
小百合先生の爆弾発言に、私とアリアは思い切り振り返った。
「あ、いいんじゃないですか?私、シングルス2に行きます」
「部長!?私ダブルス苦手ですよ!?」
「ま、いい経験じゃない?」
そんな…。
相方になるアリアをチラリと見れば、眉をしかめていた。
「いいんスか?静芭、神速使いまくって潰れても」
「心配ないわ。手塚、三時間程度なら使える様になったし、神速使うボールと使わなくていいボール分かってるし」
「え!?マジで!?」
「あ、うん。一応」
アリアは頬を少し掻くと、考え込む。
暫くすると、ため息付いて私の肩を叩いた。
「前衛で好き勝手やりな。フォロー出来るならする。日吉君みたいな動きは期待しない。いい?」
「ありがとう。頑張るよ」
オーダーが決まった。
公式試合初のダブルスが、全国大会初戦。
波乱の幕開けだった。