多分長編なんだと思う
□紳士と歴女の食事風景
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「名無しさんさん、テニス部に狙われています」
「は?どう言う意味?」
キョトンとする私。
「マネージャーが欲しいそうです。ミーハーではなく、真面目な。幸村君たちを見て動じなかった名無しさんさんに、白羽の矢が立ったみたいです」
「ああ、そっか、そう言う事か」
マネージャーと言うが、私は朝夕練習に縛られると不都合がある。
ゲーム出来ないし読書出来ない。
ある意味死活問題と言っても差し支えない。
それに、弓道部に届けは出したし。
「テニス部のマネージャーだと苛めがあります。名無しさんさんなら大丈夫でしょうが、どうしますか?」
「苛め?穏やかではないね。弓道部に入ったから、マネージャーはやらないよ。でもテニス部マネージャーになると、何故苛めがあるの?」
「私が言うのもなんですが、テニス部はモテるので」
ああ、そうだった。
顔に興味がなくて、すっかり忘れていたんだった。
ゲームで美形に囲まれて、麻痺したんだろうな。
情けないけど。
「比呂君は、私にマネージャーになって欲しい口振りだね」
「分かりますか?」
「ふっふー。私を誰だと思ってる?」
「失礼、そうでしたね」
離婚してバラバラになるまで、毎日顔を合わせた幼馴染み。
分からない筈がないでしょ。
ゴルフ部なのに、何故テニス部マネージャーになって欲しいかは分からないけどね。
「ですが、弓道部に入ったとしてもテニス部は諦めないでしょう」
「それは、まぁ…。面倒だね」
晩御飯は、結局二人で食べる事になった。
おかずを装い終わり、椅子に座る。
一人だと寂しいでしょうと言う幼馴染みの心遣いに感謝しつつ、私は手を合わせた。
「ミーハーでなくて目を付けられたなら、ミーハーだと思わせれば宜しいでしょ?」
「そうです。名無しさんさん、楽しそうですね」
「そう?ふふっ」
ちょっと作戦を考えてみた。
「比呂君、頼みがあるんだけど。テニス部の事をもっと教えて?」
私は比呂君のおかわりをよそおいながら、頼み事をした。