多分長編なんだと思う

□紳士と策士(?)の参謀観察
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バレンタインデーのお返しに、比呂君が映画に誘ってくれた。

SF物だけどラブロマンスが入っていて、女性客ばかりで入りにくかったんじゃ、と言う突っ込みはした。

比呂君は否定してたけど、多分ビンゴだと思う。

フラフラ買い物に行けば、柳君も来ていた。

こちらに気付いたので、愛想良く笑い、手を振ってやる。

柳君は無表情で、ノートを取り出した。

データにするつもりらしい。

「この状況。私がいたら、不都合ではないですか?」

男といるなら恋人と思われて、マネージャーの安全牌になる事を言われたらしい。

「どんな状況でも利用するけど」

「名無しさんさんらしいでね」

「ふふー。寧ろ好都合かな。股掛け出来る女を演じますかね」

「それは…。流石に感心しません」

「でしょうね、比呂君は。まぁ、彼氏がいてもミーハーな人間は居るからね」

それで妥協しますかね。

やれやれ、明日は柳君に話掛けるミッションが出来てしまった。

「名無しさんさん。私に出来る事はありますか?」

「大丈夫。普段通りに。ね?」

恐らく、柳君は私に話し掛ける。

比呂君に好きな子出来るまで、データを偽らせて貰うよ、柳君。

こちらからは、話し掛けに行かない。

彼氏同伴で、狙う男に話し掛けるバカは少ないから。

柳君と同一一位。

成績優秀な馬鹿もいるが、それを演じるのは骨が折れるし。

「名字さん」

やはり、声を掛けたか。

「こんにちは、柳君」

ニッコリ笑えば、柳君もほんの少し笑った。

「ふむ。風紀委員の柳生と付き合っていたのか」

「違うよ、そんなんじゃないよぉ。でも、今日の事は秘密にねぇ?お願いっ!」

言って上目遣い。

比呂君、爆笑は堪えて。唇と肩、少しだけど震えてる。

「蓮二、お友達?」

どうやら、柳君は母親の買い物に付き合っていたらしい。

柳君のお母さんにも、愛想よく丁寧にお辞儀する。

「はい!こんにちはぁ!柳君にはよくして頂いていますっ」

否定をしようとした柳君を制して、ニッコリ笑う。

だから、ヒロ君。爆笑は堪えて。

柳君が不快にしたのちょっと楽しい。

でも、比呂君は笑い堪えるの辛そう。

「申し訳ありませぇん。連れがお腹痛そうなので失礼致しますねぇ。柳君、また学校でねぇ」

相変わらず不快そうな柳君を見つつ、私は比呂君の腕を引いていく。

「大丈夫?」

「は、はい、っ、大丈夫、です」

そう言うけど、肩まだ震えてる。

「やめてよね。危うく計画に綻びが出るところだよ。ヒロ君、笑い過ぎ」

「でも、例え私が笑ってるのが分かっても、名無しさんさんならそれすら利用するでしょう?」

まぁ、否定はしないけどね。

言うだけ無駄だと判断し、私はため息をついてヒロ君が落ち着くのを待った。

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