多分長編なんだと思う

□策士(?)と魔王の騙し合い
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翌日、躊躇しながら登校したが、昨日から何も言われていない。

「ジャッカル先輩っ」

「赤也か。珍しいな」

「へへっ」

今度は、一年の切原か。

「真田副部長の鉄拳、反撃した女を見に来たんスよ」

うっわ。よりによって私か。

「ほら、家にあった林檎、持って来たっス」

「そのまま握り潰すか?噂だろう、実際出来る訳がないだろう」

出来るけど、否定してくれてありがとう、ジャッカル君。

ったく、嫌な噂だわ。

「で、どいつっスか」

「待ってろ。名字」

呼ばないで、お願い。

「おい、名字」

再度呼ばれて、渋々立ち上がる。

ミーハーをよそおうのも楽ではないな。

「こんにちはぁ、切原君」

ニコリ、と笑っておく。

「なあ、これ潰してくれるか?」

「ええ〜、無理だよぅ」

自分に鳥肌たった。うん。

「なんだ、出来ねぇのか」

「出来る訳がないだろう」

「あ、電話だ。ごめんねぇ?」

掛かってもいない電話に出るふりをして、教室を出た。





そのまま屋上へ。

あ、鍵が開けてる。

私は寒い屋上へと足を踏み入れた。

…げ、幸村君。

「おはよう」

気付いてたか。

気付かないなら、退散してるところだけど。

「おはよぉ、幸村君」

「昨日は真田が世話になったね」

「うん、ごめんねぇ?」

「名字さん、普通に話たら?君の話方、そんなんじゃないだろう?」

「ふふっ、何の事ぉ?」

幸村君、黒いな。

ニコニコ笑い続ければ、幸村君が少し驚いた。

そのまま笑ったのが意外だったのかな。

「会った時は、そんは話し方じゃなかったよね。…あ、」

…しまったな。会った時は興味なかったから、違和感を抱かれたのか。

「どぉしたの〜?」

「いや、いいんだ。気のせいだろうから。名字さん」

「んー?なぁに?」

「テニス部って、どう思う?」

そう来るか。

実は、俺たち好きじゃないでしょ?と来ると思ったが。

まあ、いいよ。うん。

「とっても格好いいよぉ!優勝したし〜」

「ふふ。ありがとう。いい肩書きだろう?」

…いいかまかけ、だ。騙し合いに慣れてたりするのかな?

さてはて、魔王さんの真意はどこにあるのかね。

肯定して欲しいのか、否定して欲しいのか。

肯定したらミーハーと思われるか、肯定するのを狙って見破る積もりか。

"肩書きって大事なの?肩書きなくても、ちゃんと君たちを見てるよ"とミーハーを隠した女の答えを期待してるのか。

いや、どう考えても勘繰り過ぎだ、うん。

考え過ぎは、相変わらず抜けない悪い癖だな。

「うん!そうだね〜」

笑いつつ、一瞬で考えた後にそう肯定を返す。

――よし、ビンゴ。不快を隠している。

隠れて仁王君もいるし、失敗は出来なかったからな。

「幸村君、一緒に戻ろぉ?」

「…先に戻ってて」

「そぉ?分かったぁ〜」

私は再び笑って屋上をあとにした。
 

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