多分長編なんだと思う
□魔王と参謀の興味牽引
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「名字名無しさんのデータの修正は、今週に入って三度目だ」
データは取れたかい?って聞けば蓮二が分かるか分からないかのシワを眉間に寄て言った。
"更新"ではなく"修正"であるところが、いかに彼女が計れないかを物語ってる。
成績や身体的な物を除き、彼女のデータがなかなか取れないらしいね。
「柳生に聞いたら?」
「ノーコメントだそうだ」
そっか。柳生は名字さんの味方なんだ。
「部長。参謀」
噂をすればなんとやら。
蓮二がここに来ているのも、計算していたみたいだ。
名字さんがプリントをヒラヒラさせつつ席に来る。
以前は彼女に刺す視線を向けていた女子が、今では完全に落ち着いている。
怖がってる女子もいる位だ、相当に立ち回りが上手い。
蓮二も、それに気付いている。
「また権謀術数か」
「権謀術数だなんて、参謀は大袈裟だ。疑心暗鬼に掛かってて、嵌まり易かっただけなのに。彼女たちとは、ちゃんと話し合いしたよ」
話し合いでは怯えないんじゃないかな、普通。
そう思いつつ、プリントを受けとる。
名字さんが差し出したプリントには、部で使うドリンクやプロテインの値段が記載されてた。
…今の購入価格の、6割の価格で。
今でもかなり安いのに、それよりもずっと安いなんてね。
蓮二も驚いて、名字さんを見る。
「数は推測してるけど、確実じゃないから後で必要量知らせて」
名字さんはそう言って教室を出る。
これ、良く見れば、箱が潰れたりしてる奴だ。
お店には出せないけど、飲めれば十分な俺たちにとってはいい話。
名字さん、マネージャーを嫌がってた割に、仕事はきちんとこなすな。
寧ろ、優秀と言っていい。
「精市、知ってるか。彼女はマネージャーになるまで、テニスのルールすら知らなかった」
「え?」
名字さんは、引き受けた翌日からスコアを付けていた。
間違いなく、正確に。
それどころか、苦手なコースまで分かってたけど。
「引き受けた当日、柳生と一緒に入門書を買っていたのを最近知った。大方、本人は徹夜して頭に叩き込んだのだろう」
「それ、正確な情報?」
「確認は取れている、100%間違いない。柳生にも証拠と共に確認取れば、曖昧に笑っていた」
って事は、事実、なんだ。
わざわざ隠す事じゃないのにね。
「何で隠すのか、興味湧かない?」
「ああ。いいデータが取れそうだ」
「部活になったら聞いてみようか」
「彼女がそう簡単に口を開くと思うか?」
「開くようにするのが、蓮二の役目」
だろ?と、笑って蓮二を見れば、蓮二はひきつっていた。
「彼女を策に掛けて吐かせるのは、俺でも無理だぞ。交渉の類いも思い浮かばない。データ不足だ」
引っかけも出来ない、物でも釣れない。
名字さんは、本当に厄介だと思う。
平たく言えば、扱いにくい。
まぁ、だからこそ興味が沸くんだけどね。