多分長編なんだと思う

□策士と魔王の混ぜるな危険
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〔其の壱、真田サイド〕





今日の授業で絶対零度について教わった。

そしてそれは、今みたいな雰囲気も絶対零度と言ってもいい気がするのだ。

「「ふふふ」」

見つめ会う精市と名字。

精市が女子と見つめ合えば周りが煩いが、今日は青い顔をして下がっている。

笑顔なのだが、どうしてこの二人が見つめ合えば寒気を催すのだろうか。

「さっ、真田、何とかしろっ!」

何とかと言われるが、どうすれば良いのか。

俺に言ったクラスメイトに問いたいが、奴はそう言うなり退散し、遠くから隠れる様に見詰めるばかり。

そもそも、この二人が冷気を撒き散らしながら笑い合ってる原因すら分からんのだ。

蓮二と言えば、この二人を見た瞬間、迷いなく踵を返す。

そして俺は、それを懸命な判断だと思ってしまった。

「ねぇ、そう思うだろう、名字さん?」

「私は寧ろ、部長がそうだと思う。ねぇ、魔王陛下?」

――!!?

名字は、怖じ気もせず、笑ったまま魔王と精市に言った。

陛下、を付けたのは挑発だろう。

精市の雰囲気が、周りの空気が、黒く染まる。

確かに、あれなら魔王だが。

それを平然とする名字も、十分魔王ではないだろうか。

「「何を考えているか、直ぐに分かるよ。ねぇ、真田?」」

「!!?」

二人の顔が、ゆっくりとこちらを向く。

え、えぇいたるんどるぞ弦一郎!

何とか自分を叱咤し、二人に言葉を発しようとした。

だが、何故か視界が暗くなり、耳も遠くなる。

…イップス。

そう言えば、仁王たちが蓮二と名字は混ぜるな危険と言っていたな。

とんでもない、精市と名字が混ぜるな危険だろう。

…今日の練習、俺は無事に参加出来るだろうか。
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