多分長編なんだと思う

□部員と策士の痼融解
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「最初は不安もあったけど、名字が優秀で助かるよ」

部長が柔らかく笑ったけど、私は思い切り苦い表情をした気がする。

優秀って言うのは、参謀みたいな人じゃないのかな?

私は只の雑用に毛が生えたみたいなもんだし。

「ま、引き受けちゃったからね。多少なり役に立たないと、マネージャーの意味がないから」

タオルをバスケットに入れて運ぶ。

手が塞がってる私の代わりに部室を開けて貰ったから、仁王にお礼を言った。

やはり、ちゃんとお礼言うのちょっと意外みたいだった。

私は、本当に印象悪いな。礼儀くらい弁えてるよ。

「名字。お前、テニスはせんのか。それだけ頭がいいのだから、いい頭脳戦が出来るだろう」

「いや、副部長たち見てると無理だと思う」

男子だから凄い、っていうのもあるけど、あんなテニスは頑張っても出来ないよ。

「キャバ嬢とかはどうじゃ、と仁王君は言う」

ふふ、ビンゴ。

仁王君には、私から目を反らす。

目の前の彼ら見てると無理な気がする。

みんなイケメンだからね、年若いホストに見える時があるし。

「仁王君もホストに向いてるよ、きっと」

「よう言われる」

「あはは、やっぱり?」

タオルを仕舞い、部室を出ようとした。

さて、部活終わったし着替えて帰ろうかな。

「名字、今回から部室で着替えなよ。わざわざ女子トイレ使ってるだろ」

部長が言うと、レギュラーは部室を出た。

…行く手間が省けたけど、なんか申し訳ないな。

急いでジャージから制服に着替え、部室を出る。

「みんな、ありがとう」

「うん。マネージャーだからね」

部長が言い、参謀が錠を掛けるとそれを私に渡した。

「スペアだ」

「いいの?私に預けても」

「お前は悪用しない。漸く取れつつある俺のデータがそう言っている」

「数日しかいないのに、良く言えるね。そのデータも謀に掛けてるかもしれないのに。無用心だよ?」

「悪用する人間は、先ずそうは言わない」

「私なら、そう思わせて悪用する」

「…やっぱり返して貰うか」

笑って参謀に返せば、案の定、参謀は受け取らなかった。

「あはは、返して貰うって言った割に、やっぱり私が悪用しないって思ってるね。一番危ないよ、過信は」

「そうではない。お前なら、部室の鍵も素手で壊せるだろう?」

「どうかな?後々の事を考えて下手な真似はしない」

「だろうな。まぁいい、持っておけ。マネージャーとして必要だろう」

「甘いなぁ。鍵事態に価値があるの頭に入てる?あの男子テニス部の部室の鍵だよ、ファンクラブ垂涎物なのに」

そう言いつつも、私はポケットに鍵を閉まった。

どうせ、私が本当は悪用しないの分かってるだろうから。

その証拠に、みんな何も言わない。

それどころか、部長はニコニコして私を見てるし。

「名字さんって、最近流行りのツンデレだよね」

「ツンとした覚えもデレた覚えはとんっとないよ」

「そう?ちゃんとお礼言ってるのに」

「それ、人として当たり前だから」

「そっか。でも、ツンまで行かなくてもそっけないね」

馴れ合う女を嫌がった君が言う台詞じゃないよ、部長。

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