多分長編なんだと思う

□部員と策士の部活風景
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応援は有難いが、騒がしいとどうにもならない。

赤也は露骨にイラつき、弦一郎は眉をしかめた。

丸井と仁王と柳生は曖昧に笑い、ジャッカルは眉を下げた。

そうだ。

「名字」

「参謀」

「あの応援を止める策が欲しいのだが」

名字ならば、或いは可能かもしれない。

と、言うより、どうにか出来るとしたら名字だけだ。

精市が美化委員で遅れていなければ、多少はどうにかなったが。

「精神統一」

「それが出来ないから言っている」

精神統一は、最もな意見だが。

外から菓子を投げ入れられたりしているのだ、無視も出来ない。

「黙れと言ったところで聞かんしな」

弦一郎が肯定し、腕を組んだ。

「それとも、策士のお前でも無理か」

「参謀、もう少しマシな挑発出来ない?」

「悪かった」

この女には、挑発も物で釣るのも不可能。

諦めるしかないか。

「そうだね。気が変わった。条件付きなら静かにさせてもいいよ」

マネージャーを引き受けた時と対して変わらない台詞を言って、名字が笑う。

…面白い。

「因みに、その条件とは?」

「肩揉み」

「は?そんな事でいいのか?」

そんなに簡単な物でいいとは、予想すら付かなかった。

名字に関するデータが少ないのもあるが。

これは、データに直ぐに加えよう。

「肩凝り馬鹿にしないで貰える?開眼して驚かれた上にデータにされてもね」

「肩凝りとは、たるんどる!」

「じゃあやらない」

「む。す、すまなかった」

名字は弦一郎から俺に向き直り、鮮やかに笑う。

やるのかやらないのか、問うまでもなく、了承するのを分かっての笑みだ。

「その条件を飲む。頼む」

「後で宜しくね」

名字は応援する女子に向かう。

それだけで外野の一部が静かになった。

「ふふっ」

笑った。

おそらく何時もの様に指を唇に当て、不敵な笑みを向けているのだろう。

「喧しいんだけど?レギュラーが集中出来てない」

「な…!」

「馬鹿にして…!」

火に油を注いだ。俺も弦一郎もそう思った。だが。

「ちょ、ヤバいって!」

「名字敵に回しちゃダメ!」

こんな台詞が聞こえ、女子同士でたしなめる。

「懸命な判断ね」

言って名字が喉を鳴らし、こちらに戻る。

俺の前に来た時は、完全に静まっていた。

「何をやったんだ?」

「三十六計の連環がまだ効いてる」

絶句した。

三十六計とは、兵法の事だ。

三十六計の連環は、幾つもの策を発動する事を差す。

それが今も効果を出している、となると、本当に何をどうやっているのか。

応援席を見れば、名字に突っかかった女子は、他の女子から何を聞いたか知らないが、完全に怯えている。

「ふふっ」

また何時もの笑いを浮かべ、名字はスコアを取り始めた。
 

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