多分長編なんだと思う

□キングと参謀の連環拝聴
1ページ/2ページ

立海がマネージャーを確保した、と言う話は、推測通り青学や氷帝に広まった。

氷帝が合同練習を申し込んで来たが、それもマネージャーである名字名無しさんを探る行動の一貫である事は間違いない。

此方とて、合同練習は好都合。

データを取る好機でもあるが、何分最近は天候が悪かった。

氷帝の跡部保有の屋内練習場を使えると言うのも、メリットの一つ。

珍しく遅刻しなかった赤也が朝食を移動中に取っており、小言を垂れる弦一郎を横目に見ながら、氷帝と合流した。

精市と跡部が挨拶をすれば、跡部は予想通り名字を呼んだ。

「いじめや嫌がらせなどはないのか?」

「ふふっ、あったらマネージャーやっていませんね」

「そうか。うちもマネージャーが欲しいんだが、立ち回りを参考に聞きたい。男子をマネージャーにすりゃいい話だが、希望者がいなくてな」

俺も興味がある。勿論、精市もだろう。

名字は、弦一郎と赤也を見て、然り気無く距離を取った。

聞かれたくない、と言うより、聞かせる話ではないと判断したのだろう。

俺のデータがそう言っている。

「参考になるか分からないけど」

言って、名字は口を開く。

精市に目配せし、気配を消して会話を盗み聞いた。

俺はデータを取りながら、流石に何度も手を止めてしまった。

これは、参考に出来る様な話ではない。

「因みに、私、友人も結構いるので、体育などでハブられたりもないし、極々平和だよ」

それはそうだろう。

策を使わない名字は、人柄がいいと言うデータは取れている。

人望にも厚い。

更に名字の策でカップルになった者もおり、信仰すらされる始末。

普通に頭がキレるだけではない。

「聞いたはいいが、参考にならねぇな」

「あはは、残念だね」

名字は朗らかに笑った。

権謀術数。相変わらずの策士ぶりだが、手口が大胆だ。

呼び出しの手紙を貰った時点で、家庭用のデジカメを仕掛ける。

顔など肌が露出している部分以外を殴らせ、学校を通さず、録画物を証拠に直接警察へ被害届けを出した。

当然、加害者は未成年ながら汚点になる。

生徒もさる事ながら、親が動揺したのは聞かずとも明らかだ。

勿論、怪我の診断書も忘れない。

警察により、警察、学校、加害者被害者の生徒と保護者による会議になる。

学校側は、一先ず生徒と保護者と教師による話し合いをすると警察を返す。

これは、名字の予定通り。

話し合いを激化させたかった名字は、警察が邪魔だった。

激化させなければ、弱みを握れない。

「話し合いの記録を取らせて下さい」

名字は、筆記用具とメモを出した。

それでいて、極秘で録音と録画での記録をしている。

記録には間違いないが、録音録画が本命だと気付いた者はいなかっただろう。

筆記用具とメモによる記録は、ある事ない事書いたと、後で何でも言える。

記録は許可してある以上、例え筆記が本命の記録でなかろうと何も問題はない。

筆記での記録など、名字は明言していないのだから。

記録の許可が降りた時に、密かに笑ったであろう名字が目に浮かぶ。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ