多分長編なんだと思う
□策士と参謀の交換条件
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「で、ついでに心理戦に於ける有効データを収集してきた」
立海なう。部室なう。
「ほう、流石名字だな」
滞りなく、跡部君の頼みを叶えてきた。
あの後は、氷帝レギュラーと準レギュラーと接触。
ミーハーだとは思われてなかったから接触は簡単だったが、完全に警戒されていた。
スパイを疑われるのは尤もだが、警戒心が高いのも実は十分いいデータなんだよ。
表向き、ファンクラブ対策としての話を聞いたから、会話は普通に出来た。
因みに、ファンクラブ対策は嘘ではない。
きちんとファンクラブ対策についても幾つかアドバイスを残している。
記録された小さな手帳をちらつかせつつ、私は参謀につい、と目を細ませた。
絶対的優位者の態度を取る練習でもあり、氷帝の跡部君の態度の参考活用でもあったりするけど。
参謀は眉を少し動かして、交換条件だと察しを付けて来た。
「いいだろう。名字、何が望みだ」
話が早くて助かるよ。
「暫く私側に来てよ」
「ほう…」
うん、参謀の笑みもいい笑みだ。余裕綽々。
普通なら意味が分からないだろう会話も、参謀はこれだけで全てを察してくる。
やはり、参謀は流石だよ。
「明確な日時は3ヶ月。それだけの価値はあると思うよ」
「お前がそう言うなら100%間違いはないな。いいだろう」
「決まりだね」
データを参謀に渡した。
これで参謀はこちら側、つまり私の味方。
前回、私を巻き込んだ奢り話が出たけど、私に味方はいなかった。
毎回毎回、部長を押さえるのは大変なんだよね。
参謀が私側に来れば、副部長と幼馴染みは私側に来易い。
だから、3ヶ月は部長だけを警戒すればいい。
少し距離が近くなっていたんだ、交換条件なら距離を取れるし、メンバーとも距離を置ける。
「フッ。良くこれだけのデータが取れたものだ。確かに、3ヶ月の価値は余裕である。やはり策士だな」
渡したデータと参考コメントを見て、参謀が愉快そうに唇を吊り上げた。
「交渉に偽りは出さないよ。"信用"を無くすからね」
「ああ、お前の事は"信用"している。お前のデータは"信頼"している」
満足の答えをどうもね、参謀。