多分長編なんだと思う
□魔王と策士の恐怖政治
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「一年生、声が出てないよ?」
柔らかい一声なのだが、一年の顔色が青くなっていく。
忽ち、声が大きくなった。
応援も一度騒がしくなっても、今では名字が笑みを浮かべてそちらを見るだけで静かになる。
「名字さん、相変わらずいい仕事ぶりだよ。やっぱり、君にマネージャーをお願いして良かったな」
「それはどうもね」
女子にしては力があり、仕事も如何にすれば手間が掛からないかを判断するから捌ける。
何より、部員の手間を取らせないのだ。
マネージャー絡みに苛めがあったりはしたが、名字の場合それが無い様に手を回した。
必要以上に関わろうとはしない。
否、唯一肩揉みを希望するが、それも交換条件でのみ。
成績も優秀。俺と一位を争う仲だ。
観察眼に優れ、特に心理戦を得意とする。
一年生は、試合慣れしてないのもありプレッシャーに弱い人物もいるが、メンタル面のアドバイスを希望すればレクチャーしていた。
本来、それは俺たちの役目なのだが。
「マネージャーって、本当に敵に回したくねーよな」
「ああ。副部長に殴られる方が、後腐れなくていいぜ」
そんな会話が聞こえ、つい苦笑が漏れそうになった。
精市を見れば、なにやら弦一郎に言い、弦一郎が青くなってる。
名字はそれを見ても、やはり普段と変わらなかった。
そう言えば、最近テニス部は"魔王と策士の恐怖政治"と言われていると聞いたな。
言い得て妙、だが、言った本人は無事だろうか。
俺はつい、そんな心配をしてしまった。