長編

□新世界で奏でるlife2
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青学受験を控えた冬。

私は兄さんのテニス部仲間と一緒に初詣。

ご丁寧に着物である。

久しぶりの感覚が、嬉しい。

呉芭は元気だろうか。

もう会えないのが寂しくて仕方ない。

「あけましておめでとうございます」

頭を下げて挨拶。

そして、見知らぬ顔が。

「静芭さん、弟の裕太だよ。裕太、手塚の親戚の静芭さん。二人同い年だね」

「初めて、裕太さん。お兄さんにはお世話になっています」

「あ、お、おぅ」

頭を下げたけど、引かれた気がする。

「クスッ、相変わらず丁寧だね。同い年なんだから、普通に話してくれないかな。裕太が戸惑ってる」

「分かりました。宜しくね。裕太君と呼んでも構わないかな?」

「あ、あぁ。宜しくな」

「行くぞ」

兄さんに言われて、ぞろぞろと神社に向かう。

「裕太君、志望校決まった?」

「あぁ。青学」

「そっか。一緒だね」

「そうなのか」

雑談をしながら、境内へ。

かなりの人だかりだ。

順番を待ち、お参り。

続いておみくじ。

「げ、凶…」

裕太君がげんなりしてる。

おみくじくらいで可愛いこと。

菊丸さんは中吉らしく、判断に困っていた。

河村さんと大石さんは吉。

不二さんも大吉。

兄さんは見せてくれなかった。

「貸して。大吉だから取り替えっこ」

裕太君のおみくじを引っ張って奪い取り、無理矢理大吉を押し付けた。

「おい、」

「私、悪運強いから。凶なんて大した事ない」

死ぬ筈だったけれど、生きてる訳で。

そして手塚家に来れたのだから、強運と言える。

そもそも、20年以上生きて分かった事だけど、おみくじはアテにならない。

気休め程度に先が分かるだけで。

私はとっととおみくじを枝に結んだ。

「ありがとう、静芭さん。良かったね、裕太」

「何か、かなり悪い気がするんだが」

「あまり気にすると、頭禿げるよ?」

「それは嫌だ!」

言って頭を隠す裕太君も、なかなか可愛いものだ。

「静芭、いくぞ」

裕太君と話をしていたけれど、兄さんに腕を引かれた。

そうだ、お守りを買わなければ。

「兄さん、合格お守りなんて要らないよ。無くても受かるから」

「そうだな。だが、油断はするな」

「しないよ」

学校では一番にならない努力をしている。

勉強も、チートだから。

幸い頭がいい子がいるから、私も満点は取ってるけれど。

受験は面接もあるし、一位にはならないだろうから全力を出す。

落ちはしないだろう。

「健康位かな、買うのって」

お守りを購入すると、裕太君に声を掛けられた。

「静芭」

渡されたのは、この神社の袋。

開ければ、厄除けのお守りが入っていた。

「その。変えてくれた礼だ」

「静芭さん、ちゃんと受け取ってあげてね」

「わざわざありがとう」

返すのも申し訳ないし、私は有り難く受け取った。
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