長編

□新世界で奏でるlife4
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体育祭。

生徒会絡みで、兄さんが部活に来るのが遅れる日が続く。

やむを得ない事は、皆が皆重々承知。

咎める者は勿論いない。

生徒会に入らないか、と言われたが即断で拒否した。

兄さんが生徒会長になれば、多忙な彼をフォローする為に吝かではないが、現状下では入っても二人して体のいいからかい甲斐のある玩具に成り下がるのが想像に容易い。

私は体育祭クラス委員を任される。

不本意だ。

幸い、体育祭クラス委員は、文化祭程多忙な訳でもない。

各クラスにおける競技種目の提案と、委員会での選定。

後は精々競技種目に生徒を宛がい、委員会に報告するだけだ。

だけ、とは言ったが、面倒ではある。

「司会進行の手塚です。さっさと終わらせるので、協力を。ダブった場合、じゃんけんで決めます。拒否はなし!」

横暴だ、と声が上がらない。

皆が皆、早い帰宅、或いは早い部活を望んでいる。

「手塚、頼むぜ。早く帰りたい」

「勿論。私もデートだし」

「な!?手塚がデートだと!?」

「相手はテニスボールだけどね」

言えば、クラスで笑いが渦巻く。

ピリピリした一部の苛立ちを相殺するのに成功し、私は競技欄にクラスメイトの名前を次々当て嵌める。

全ての生徒名を、10分経たずに埋め終わるのに成功。

クラス会議の終了と解散を宣言し、部活や帰宅に慌ただしいクラスメイトを横目に、担任に確認と承認印を要求した。

「お前、手慣れてる気がする」

「気のせいです」

「そうか?だが社長とか向いてそうだ」

言われた言葉に曖昧に笑いで返し、内心、元宗家当主のプライドだと呟く。

承認印を貰うと、直ぐ様生徒会室へ。

今は生徒会と体育祭実行委員会で、室内がごった返している。

非常に狭い。

競技者名簿入れに入れるなり、直ぐ様生徒会室を後にすべく、踵を返した。





体育祭当日。

立海のみんなに遭遇。

体育祭がある、と言えば、みんな青学に来たいと言っていたのだ。

「静芭姉さん。あ、今日は部活じゃないから手塚って呼ばないから」

会った早々、幸村先輩に宣言されるが、内心不服である事は言うまでもない。

言っても仕方ないから、口にはしない。

「静芭姉上は、どの競技に出るのだ?」

「クラスリレーと部活対抗借り物競争。後は応援団」

応援団の練習は、かなり大変だった。

炎天下の中で練習するのは構わないが、慣れている人間ばかりではない。

「部活対抗、ってマネージャーだろぃ?」

「女テニに駆り出された」

「成る程のぅ」

「だが、静芭姉も女子テニス部で、部活後にちょっとやってるんだったろ?」

「そうだよ。友人が女子テニス部だから」

部活対抗では、部費の増額がされる。

どの部活も本気なのだ。

「部活対抗は、あまり見せたくない」

「む。どういう事だ」

「借り物競争、別名、借り物"妨害"走」

例え女同士であっても、熾烈な競争がそこにはあるらしい。

とは言え、実は内容の推測は出来ていたりする。

お目当ての人気男子を借りる為に、争いが起こる。

男子の場合、目当ての女子を借りる為。

「何でそれを見せたくねーんだよ」

「赤也君。異性を巡る争いを、大事な子に見せたい?」

「いや、それはねぇな」

「でしょう?」

大事な可愛い子たちに、そんなドロドロした物は見せたくない。

それは万人がそうだろう。

「だが、いいデータは取れる」

「そう?いい、と言えるデータなの?」

私は蓮二君の感覚に、甚だ疑問を感じる。

価値観の違い、と十把一絡げにするのは問題があるとも思う。

尤も、蓮二君がいいデータというのなら、口に出して否定する気は全くないが。
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