長編

□青の双璧2
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地区大会。

青学は男女共にシード。

ノーシード校に比べ、集合が一時間遅い。

私も兄もいつもの様に朝のトレーニングをし、シャワーを浴びる。

「ありがとう、兄さん。お先でした」

「あぁ」

交代し、私はご飯の支度へ。

皆が食卓に揃えば、朝食となる。

「朝から重いけど、うな茶だよ」

言えば、兄さんの表情が明るくなる。

「あぁ」

「国光!好物なんじゃから、もっと嬉しそうにせんか!」

「え?お祖父様。兄さん、とても嬉しそうですけど」

数泊の沈黙。

「「「そうか?」」」

「はい。とても」

「ふふっ、そうね」

声を重ねて聞いたお祖父様と兄さんと父さんに、苦笑を一つ。

「ぬぅ。国光の表情は変わらんと思うが」

「そんな事はないです。とても表情が豊かで、私は兄さんの顔、好きです」

言えば、兄さんは照れている。

お祖父様と父さんは、全く気付かないらしい。

「さて。先に行きますね、兄さん。行ってきます」

私は少し早めに家を出た。





小百合先生と部長と話し、私は初戦以外はシングルス3になる。

試合経験を少しでも補う為だ。

アリアはダブルス1を部長と。

「試合が回らないと困るわ。初戦は五戦するから、手塚はシングルス1で行きましょうか」

「分かりました」

オーダー表を持って受付へ。

「青春学園中等部です。レギュラー八人の受付をお願いします」

部長が受付に渡すオーダー表。

少し、ドキドキする。
こんなに大きな大会は初めてだから。

怪我をした律先輩からは、楽しんでおいで、とメールが来た。

頑張って、や、勝ってね、じゃない辺りが彼女らしい。

「あれ、沢村律子がいない」

「あぁ、事故ったって聞いた」

「マジで?変わりの子カワイソー」

何が可哀想なのか。

普通は怪我した相手を気にするものだろう。

なぜ私が気にされなければならないのだろうか。

受付が終わると、携帯が着信を知らせる。

弦一郎君からだ。

「生徒会長から?」

「いえ。友人です」

通話ボタンを押して、電話に出た。

「お疲れ様。今からお互い試合ですね」

『あぁ。そちらの様子はどうだ?』

「え?あぁ」

『どうした』

そう言えば、言っていなかった。

「私、今は男子テニス部のマネージャーじゃないので」

『む。どういう事だ』

私は理由をかい摘まんで話した。
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