長編

□青の双璧3
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ストリートテニス場を巡る。

杏とは、呼び捨てにする程に仲良くなったが、再戦は果たされていない。

試合には、幾分か慣れた様に思う。

勿論、まだ経験は足りないが。

そんな中、メールが届く。

日曜日、女子テニス部が聖ルドルフとの練習試合。

私も出ないか、と言う事だった。

日曜日は男子テニス部は部活は休み。

休みとは言え、一部生徒は練習に来ているみたいだが。

了承のメールを送り、翌日、学校へ向かう。

レギュラーのウェアは律先輩から借りていたが、返却済み。

私物のウェアを着た。

「手塚って、貴女?」

聖ルドルフの部員から、話しかけられた。

「はい」

「お兄さん、手塚国光で間違いない?」

「はい」

「ふーん。似ていないのね」

テニスの試合と聞いて、眼鏡は外している。

似ていないと言いつつ、顔をじろじろ見られ、正直不愉快だ。

「ふっ」

鼻で笑われて、些か頭に来たが、それ以上にアリアが怒りを隠せず表にしている。

激怒に近い。

「なに、アイツ」

「気にしても仕方ない。怒るだけ無駄」

私が切り捨てると、アリアも徐々に怒りを納める。

「手塚。試合出て」

「私がですか?」

これは意外だった。

聖ルドルフとは、都大会に当たる可能性がある。

少しでもレギュラーが練習したい筈なのだが。

だが、準レギュラーとかも知れない。

私が首を縦に振れば、部長は笑って名前を記入して来ると言った。

いつも思うが、私は先輩に恵まれていると思う。

ただ、目立った為にちょくちょく嫌がらせはあるし、テニス部のファンからは睨まれて、それなりに不快な思いもしてはいるが。

足して引けば、±0だとアリアは言うが、明らかに得をしている部分が大きいと思うのだ。

例えば、今の様に試合の経験値を積むのに協力してくれたり。

「試合、楽しみ」

「はは、あんたらしいわ」

アリアには笑われたが、本当に試合するのが好きなのだ。

勿論、テニス自体が好きで、試合以外にプレーするのも楽しいのだけれど。

「静芭先輩、聞きました!試合、頑張って下さい!応援してますっ」

「ありがとう、咲乃ちゃん」

顔を赤らめて、一生懸命応援の気持ちを伝えてくれた彼女の頭を撫で、私は試合への思いを馳せた。
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