長編

□青の双璧8
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関東大会初日。

エントリーを済ませると、長いラケットの男子を含む学生に遭遇。

確か、六角中。

男女の仲が良いらしく、楽しそうに話している。

男子がこちらに来ると言う事は、六角男子はまだ試合時間には余裕があるのだろうか。

彼らを囲み、子どもがワイワイ騒いでいた。

可愛い。子どもと言うのは、大概無条件で可愛い。

子どもに夢中になっていると、背中を叩かれた。

立海大付属中男子レギュラー陣。

背中に、私を通して立海を見る六角の視線を感じた。

「静芭姉上」

「こんにちは、真田先輩。丁度良かった」

「む」

可愛い子を見たくなったら、どうも抱きしめたくなってしまったのだ。

見ず知らずの子どもたちに抱きしめさせて、何て言える筈もなかったから丁度いい。

「抱きしめさせて下さい」

「キ、キェェェェエ!!」

駄目らしい。

弦一郎君の叫びが、周りの視線を集める。

「さ、真田副部長、落ち着いて下さい!あああんた、なんて事言うんだ!!」

「静芭姉、ほら。きんしゃい」

雅治君が手を広げてくれたので、そちらに方向を変えた。

「ちょ、ちょっと待て!」

アリアが肩を引き、後ろから抱きしめられた。

アリアのシャンプーの匂い。

折角なので、そのままアリアを抱きしめる。

「あ、あんたね、大声がすると思ったら人前だから」

「ごめん、意味が分からない」

「大声がするから来たら、人前でハグしてたって意味」

あぁ、そうか。

人前だと慎まなければならない。

如何せん、私は彼らを子どもと思っているので、その辺りの常識が欠落してると以前も叱られた。

「ごめん」

「分かればいい、分かれば」

解放されたが、アリアの温もりが離れると寂しい。

「ハグはグー。ぷっ」

「全然グーじゃねぇわ、ノーグーだわ!って誰やねん!」

一人突っ込みをするアリアの後ろでは、六角中の男子がじゃれ合っていた。

「おい、仁王も自重しろ。静芭姉はこうだから、俺らが自重しねぇといけねぇだろ」

「ジャッカル。チッ、邪魔が入ったぜよ」

「仁王」

「なんじゃ。参謀もハグして欲しかったくせに」

「なら、今度抱きしめさせて下さい」

「静芭さん、あ、あなたは慎みと言うものをお持ち下さい!」

「あ、ごめんなさい、柳生さん」

「まぁ、静芭姉らしいがよぃ」

「全くだよ!あんた色々ずれてるんだからもぅ!」

「アリア!…仕方ない。みんなも頑張って!」

アリアにひっぱられ、私は立海のみんなに手を振りながら、仕方なく早めに集合場所に向かった。
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