長編
□青の双璧10
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いつもより早い起床をした大会の朝だが、トレーニングメニューは変わらない。
ただ一つ変わったとすれば、朝から兄さんと電話した事。
病院だから、その事を考慮してメールで打診したら、数分後兄さんからけると返信が来て、その電話が終わった。
「相変わらずお兄さんにべたべただねー」
「あんないい兄にべたべたしない訳ないです」
律先輩にきっぱり言って返せば、クスクス笑われた。
今日は、六角中との対戦。
青学も立海もだが、男女ペアで都道府県を制している。
「六角は男子が青学に負けて、リベンジに燃えているらしいよー」
「でしょうね」
雨が降りそうな空を見上げ、九州の天気が気になった。
こちらは晴れているが、九州はどうだろうか。
腕は安静を求められても、足は使える。
兄さんは、雨でも走るだろう。
夏場とは言え、体を冷やさないか心配だ。
…あぁ、そう言えば昨晩は私がそう心配されたのだったか。
お互い、考える事は一緒らしい。
「全員揃ったみたいね」
小百合先生がオーダー表を抱きしめつつ、ふふふと笑いながら合流する。
「さて。オーダー決めましょうか。全国の掛かった切符。みんな、ちゃんと取って来てね?」
そんな言葉に、全員で勿論だと返せば小百合先生は目を細めた。
「ダブルスは通常通り、シングルスは変更。シングルス3、手塚さん」
いつもはシングルス2なのに。驚いて部長を見る。
「不満?」
全く不満がないと言えば嘘になるが、仕方がない。
「…いえ。分かりました」
「物分かり良すぎ。何か言うと思った。シングルス2、沢村さん」
「え?…ああ、そう言う事ですか」
確実に取る作戦だろう。
「んとに手塚は物分かりいいなぁ。六角、いつも確実に取るのに、上手い選手から埋めてくるんだよ」
「そうなんですか」
その為に合わせたオーダーなのだろう。
相手の作戦が外れた場合でも、こちらが確実性が増すだけだ。
勝つためには、こういう事も必要と言う事だろう。
「んじゃ、オーダー出しに行きますかね」
部長を先頭に、私達がぞろぞろ歩く。
小百合先生が、後方から私達を見守る様に付く。
ふと、何度か見たユニフォーム。
…女子氷帝と、立海大附属中。
「…」
部長が何か小さく呟いたが、吐息みたいなそれは聞き取れなかった。
氷帝と立海は、今日の対戦相手にそれぞれ勝つだろう。
そして、氷帝と立海が対戦。
私たち青学も、勿論今日の試合も勝つ。
その後、勝った方と青学が当たる。
何れにせよ、厳しい戦いになる。
先にオーダーを出し終えた氷帝と立海。
その背中を私は振り返るが、二校とも青学を振り返らず歩いて行った。