長編

□青の双璧11
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シングルス3。

次は乾先輩、か。相手は、柳先輩。

二人が私を見た。

二人と目が合ったが、どちらもリアクションは起こさずに、それぞれの事をしている。

いつも通り、だ。

真田先輩が席を立つ。

幸村先輩に電話を掛けるのだろう。

オペの時間が近付く。

本当に、男女の試合開始が逆だったら良かったのに。

「あ!静芭先輩!」

「あ、男子マネージャー。鈴木彰子だっけ?静芭、呼ばれてるよ」

「うん。行ってくる」

「行ってら〜」

ヒラヒラと手を振るアリアに、左手だけ上げて下へ向かう。

「先輩の彼氏と、乾先輩の試合ですね」

「はぁ…」

ここでもか、と私はため息を付いた。

「柳先輩とは友達で、彼氏彼女の間柄じゃない」

「え?そうなんですか?」

「そうだよ」

「じゃあ、先輩も乾先輩を応援するんですね!」

嬉しそうにする後輩には、答えなかった。

狡いとは思うが、私は二人を応援している。

「あっれー?手塚静芭ちゃんだ!」

山吹中の…、確か千石清純。

兄さんがJr.辞退して、代わりに行った人。

「手塚君に似てなくて可愛いね!」

私は髪をほどき、分け目を兄さんと同じにして再びポニーテールにして伊達眼鏡をした。

どうだ。そっくりだろう。

「あー、そうすると、ちょっと似るね」

ちょっと…。ちょっとだと!?

「あぁ、静芭先輩落ち込まないで!」

「あ、あれ、何か悪い事言った?ごめんね」

「…。いや、いいです」

本当は良くないけれど、私は力なくそう答えた。
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