長編

□青の双璧12
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下級生が、三位決勝戦を録画している中に挑むファイナル。

青学男子が到着し、私に聞いた。

「どうだい?」

「いつも通りです」

私は大石先輩を振り返った。

ダブルス2は落としたが、ダブルス1は取れそうだ。

「静芭さんは、またシングルス2なのかい?」

「はい。不二先輩たちは、男子三位戦見に行かなくていいんですか?」

「折角女子が応援してくれたんだ。ボク達も応援したいんだよ」

「そう言う事だよ」

不二先輩の言葉を、河村先輩が笑って肯定する。

「男女アベック優勝出来たらいいにゃ〜」

「そう、ですね」

「へぇ。高島、今日は動きいいじゃねーか」

「うん。桃城君はアリアを良く見てるんだね」

女子なのに、少し意外。

「そ、そりゃあお前見てたら自然に目に入るって言うか…」

モゴモゴとはっきりしない桃城君に首を傾げつつ、越前君を探す。

「越前なら寝てやがる」

海堂君の一言で、私はあぁと気がついた。

無我の境地をあれだけ使ったんだ。
疲労しない訳がない。

「手塚」

小百合先生が私を呼ぶ。

「ちょっと早いけど、アップしていらっしゃい」

「はい」

ラケットを握り、壁打ちに向かう。

「付き合う」

「いや、いいよ。海堂君たちは応援してあげて」

言って、コートを離れる。

私の動きを見てか、仁王先輩が私の元に来た。

「手術に行かなくていいの?」

「もう間に合わんからな。表彰式もあるしのぅ」

「…そう」

手術時間は10時間だから、終わって行ってもまだ手術中だ。

加えて、麻酔が効いているだろうし絶対安静なのだから、会話は出来ない。

「静芭姉」

「うん?」

「負けんしゃんな」

私は思わず瞬きした。

立海を応援しないのだろうか。それとも、両方応援する積もりなのか。

「静芭姉を応援しちょる。うちは応援団がおるからのぅ。一人位静芭姉を応援しても、バチは当たらん」

「ふふ。ありがとう」

そっぽ向いて告げられた意外な応援に、私は思わず頬を緩ませた。

「あと、参謀からの伝言じゃ」

蓮二君から?

「シングルス2で、女帝と当たる確率89%」

…へぇ。

「何じゃ、驚くと思うたが嬉しそうやのぅ」

「さっきの試合に触発されたかな?強い人と当たりたくて」

「そうか」

雅治君が私の頭を撫でる。

私が撫でたいのだけど、と視線で訴えてみるが、却下された。

コート側からの歓声が聞こえ、二人そちらを振り返る。

「ダブルス1は青学が勝った様じゃな」

「うん。ゲームカウント7-5って所かな」

「参謀みたいな事を言うのぅ」

想像が大体付くだけだ。

蓮二君や乾先輩みたいにはっきりとした予測は出来ない。

シングルス3が始まるのだろう。

私はラケットを握り、風を打ってみた。

雅治君が驚いた気配がするが、まだ速さが足りない。

自分なりにアレンジし、腰を低くして体のバネを使って戻って来たボールを打つ。

さっきよりは良くなったか。

「ほう。真田にいい土産話が出来たのぅ。静芭姉、そろそろ戻るぜよ」

「うん、ありがとう。みんなにシクヨロ言っておいて」

ブン太君の真似をしつつ、雅治君の背中を見送ると、私は再び壁に向き合った。
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