長編
□青の双璧14
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久しぶりの部活をランニングで始め、ランキング戦へ。
「女帝を破っただけあるねー。負けちゃった」
初めて律先輩に6-4で勝った。
無我の境地を使わずに。
「いつか、静芭に負ける日が来る予感はしてたけど、こんなに早いとは思わなかったー。次は、負けないよっ!」
「ありがとうございます」
互いに握手をして、戻る。
律先輩に勝った事でざわめきが大きくなった。
視界の端に、男子レギュラージャージを捉え、瞬時に兄さんを探し当てる。
走って兄さんの元へ行けば、不二先輩が兄さんの横で苦笑していた。
兄さんはランキング戦のくじ引きが終わって、部活に合流したのだろう。
「兄さん!」
「言われずとも、見ていた。上手くなったな」
「!」
どうしよう、誉められた。嬉しくて仕方がない。
「クスッ。静芭さん、本当に嬉しそうだね。確かに上手くなったなぁ」
不二先輩にも誉められた。
「あ、ありがとうございます」
「だが、まだまだ伸びる余地はある。慢心せず、油断なく行こう」
「うん!」
慢心すら、まだまだ出来そうにないが。
目指す高みは、まだまだ遠い。
手塚国光の足元すら見えない。
「兄さんの妹で、本当に良かったなぁ…」
言えば不二先輩が嬉しそうに笑う。
「静芭さんは、本当に手塚が好きなんだね、兄として」
「はい!大好きです!」
「そっか。裕太も、これ位ボクに素直になってくれればいいのになぁ」
「うーん。個人によって違いますからね。アリアもお兄さんに対して素直じゃないですし」
最近は大分素直になったとは思うが、やっぱりまだまだツンツンしてる部分がある。
跡部さんは、それでもアリアが可愛いみたいだが。
「でも、裕太君も素直じゃないだけで不二先輩の事、大好きだと思いますよ。遊んだ時は、不二先輩の事を聞いて来ますし」
不二先輩が固まった。
初めて見る不二先輩の動揺に、こちらが驚いてしまう。
「…裕太と、遊んだりしてるのかい?」
「はい。と、言っても、月一ですけど」
兄さんも不機嫌になったのは、何故なんだろう。
不二先輩の弟さんだから、心配する事はないと思うが。
「困ったな。手塚や乾たちには負けないけど、裕太が相手だとやりにくい」
「勝負か何かしてるのですか?」
「うん。こっちの話。気にしないで」
「?」
私が良く分からないまま、不二先輩は複雑そうに微笑んだ。