長編
□覚醒2
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「手塚妹!遅ぇ!」
「え?桃城君、何事?」
「いいから来い!」
「え?わっ、」
「大丈夫?静芭先輩。桃先輩、気を付けてよね」
桃城君に腕を引かれ、越前君が付いて来る。
「手塚妹、連れて来たっス!」
「でかした桃!おチビ!」
怪我人でも出たかと思ったが、全然違った。
「なぁ、あれ、どうしたらいい?」
指を指された先は、比嘉と書かれたユニフォームのチーム。
「!」
今のは、神速舞歩!
…いや、違う、動きがうちの流派じゃない。
基本は一緒だが。
「静芭さん、攻略法、分かる?」
大石先輩に聞かれて、私は唇を噛んだ。
「足を潰す。走り回らせて足が潰れるのを待つしかないですが。完全にものにしてる場合、足を潰すのは先ず無理です」
私が出来る様になった神速舞歩の弱点を補った様に、相手はものにしている。
先ず、無理だろう。
「或いは、手塚ゾーンで相手の消耗を待つ」
「それは、」
不可能だろう。
「後は、拾っても返せないボールを打つ。但し、相手は力があると見えます」
鍛えられた、無駄のない実戦的な筋肉。
細身に見えても、力は絶対に強い。
「テクニックで、補うしかないですね」
…ん?あれ?
何で前にしか縮地してないんだろう。
「バネさん!横狙ってみて下さい!」
あぁ、ビンゴか。
比嘉からの高速のボールが私に向かって飛んでくる。
越前君がラケットを出すが、間に合わないだろう。
避ければ、後ろの誰かに当たる。
私は左手を出した。
この程度なら、いなしながら素手で取れる。
打ったのは、レギュラーではないだろう。
フェンス越しだし。
パシりと受け取り、ボールを弄ぶ。
「コントロールはそこそこだけど、弱い打球」
吐き捨てて、適当に投げ返す。
「惑わされないで。一瞬で動いてる錯覚だけだから。冷静に!」
私は声を六角のみんなに張り上げた。
とは言うが、実際はかなりの速度で詰められれば苦戦も当然。
相手はテクニックもあった。
「天根君下がって!そこは打たせて取って!次、右!」
再び私を狙うボールが飛ぶか、越前君と桃城君がガードして私には届かない。
「回転掛かってる、掛け返して!」
「無茶言うな!」
「なら力いっぱいスマッシュ!」
「スマッシュしまっしゅ。プッ」
「真面目にやれダビデ!」
黒羽さんのスマッシュが易々と返される。
っ、相手が上手過ぎる。
「摘めて!」
私の叫びで二人は前に摘めるが届かない。
6-2のコールが響き、六角側に黒がついた。