長編

□覚醒3
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男子の試合。

すんなり試合を終わらせた立海と、氷帝戦でギリギリの試合をしてる青学。

私達が試合が終わった時は、男子ダブルス1前だったらしい。

雨の中の試合で、兄さんは勝った。

だけとまだ、兄さんの中の力が外に出てない気がする。

「お前もだろう」

口に出だ疑問に、兄さんはそう言った。
まだ、私は…。

いや、いい。試合をすれば分かる事だ。

共に玄関に立ち、見送る母さんに挨拶をする。

「「行ってきます」」

「はい。二人とも、気を付けてね」

手を振って玄関を出て、兄さんの右手に私の左手を絡める。

今日も妹スタイルだ。

握ってもブラコンとしか思われないだろう。

「うちも、今日は氷帝と当たりそうなんだ」

「そうか」

地区大会では苦労させられた。

準レギュラーに。

氷帝は、関東大会までレギュラーを温存して来たのだ。

次に当たる氷帝が、以前戦った氷帝と同じだと思ったら大間違い。

桁外れに強い。

立海に食らい付ける程に。

関東大会では運が良くて、レギュラー入りの氷帝とは当たらなかった。

立海と食いあったからこぞ、私たちは準優勝だったのだ。

「楽しそうだな」

「え?そうかな」

「あぁ」

どうやら、顔に出ていたらしい。

強いからこそ楽しみだなんて、言ったら大半に変人扱いだろうが。

「うん。楽しみだから、かな」

兄さんに答えつつ、兄さんを見上げる。

そうは言っても、強いとは言え、この人には足元にすら及ばないだろう。

手塚国光は、他とレベルが逸脱しているのだから。





体中に付けていた重りを外せば、何かから解放された様に軽いと、みんなが笑った。

私は、もう付けているのか付けていないのか、良く分からなくなった。

それだけ重りに慣れて来ていたのだろう。

シングルス3、5-7。
ダブルス2、4-6。

食らいついた。以前のうちより確実に強くなっている。

シングルス2、7-5。

首の皮一枚で繋がった。

律先輩が苦戦したのだ、その位氷帝は強い。

ダブルス1、6-3。

アリアの動きと部長の動きが、以前と比べものにならない。

体をアップさせに出たから、試合は見ていないが、結果だけ見れば二人の強さが伺えた。

コートに立って、深呼吸する。

クリアになった頭と、急速に血が巡る体。

次は私の、試合開始。

『ザ・ベスト・オブ1セットマッチ!氷帝サービスプレー!』

「無我の何とかは使いませんの?」

「次の試合に差し支えるので」

「そうですの」

相手の高速サーブ。

神速を使って死角を抜いたボールに追い付いて返す。

相手の死角に抜いてやった。

「…神速は使いますのね」

使わないと思ったのだろう。

私は唇を釣り上げた。

明確な答えは返さなかったが、相手はそれで十分だった様だ。

ざわつくギャラリー。

私が神速を使った事で、明日は使い物にならないと思ってくれれば、と小百合先生は言った。

だから、私は口にしない。

次のサーブを、居合い抜きから一閃。

消える予定だったが、相手がまさか追ってくるとは。

ラインを叩いて、直後に返された。

成る程、昨日使ったが、しっかり対策されている。

相手も足が速い。

神速程ではないが、十分な域だろう。

一閃した後の隙を突かれるかの様な一球。

ギリギリで追い付いたが、上げてしまったボール。

次のスマッシュかはたまたロブか。

着地と同時にボールを見る。

相手はギリギリまで捕球体制を維持して、なかなか打たない。

ボレー!

この状況で打たないなら、それだろうと思ったが、スライディングでボールの下に足を潜らせて跳躍し、スマッシュの威力に近いロブが上げられた。

追い付いたが、回転が掛かっている。

直前で気付いたが、時既に遅し。

ラケットに当たった瞬間、変わった線を書いて大きく逸れた。

『15-15』

神速を使って尚、この状況。

苦戦しそうだ。
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