長編

□覚醒4
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偵察部隊は殆どいない。

勝利への執念からか、唯一立海の偵察が数人居る位。

「どうしようかしら」

小百合先生が軽く息をついた。

練習メニューが定まらないのだろう。

取り敢えずいつものメニュー、なんて、喫茶店かと思う台詞が出た。

メニューを終えて、整列。

部長の言葉を聞きつつ、最前列で偵察の気配を探る。

…3。否、4。

結局自主練となり、私は小百合先生に気配の数と方向を報告。

コートに入り、アリアと二球のラリー練習。

手塚ゾーンで引き寄せつつ、試してみたい事があった。

逆手塚ゾーンで、ボールをアウトにする事。

無我の境地に入り、そこから百練自得の極みへ。

コツを掴んだからか、自分の意思で発動出来る様になった。

「アリア、お願い」

「へーい。行くよ」

サーブを返し、アリアのボールを全て外に出るべく打つ。

だが完璧には行かず、数球がコートを叩いた。

まだ回転が足りない。

百錬自得の極みを発動出来ても、使いこなせる領域に達していない。

集められた爆発力を、もて余している。

「思ったけどさ」

「うん?」

「神速舞歩で完璧な捕球体制取れるなら、それ使わなくてもいいんじゃない?」

「うっわ、アリアが言っちゃったー」

どうやら不要と思われてるが、全く間違いだ。

「手塚ゾーンを発動するに当たって、回転を上乗せさせたり威力上げたりするのに必要なんですよ」

「でもさー、神速時間伸びたら手塚ゾーンすら余り要らないんじゃないー?静芭体力あるし」

「そそ。コントロールもいいし、元々パワーもあるし」

そんなに簡単な話ではない。

第一、神速舞歩や手塚ゾーンが破られる可能性もあるのだ。

打球だって強い、と言うだけであって、一番じゃない。

今のところ、そういった相手に恵まれてないだけで。

それに。

これだけ出来ても、兄さんには絶対叶わない。

高みが見えないのに、この程度で満足も出来ない。

「女帝、復讐に燃えて強くなってますよ。手塚ゾーン、攻略されるかもです、ね」

「「!」」

言えば、二人は目を見開いた。

勿論、易々と攻略される積もりは微塵もない。

「アリア、続きお願い」

「あ、うん。じゃあ行くよ!」

練習が再開される。

ボールの回転を見つつ、私はラケットを構えた。
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