長編

□璧たちよ、高く翔べ2
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翌日合宿からだから、暫く出掛けられなくなる。

合宿場の施設で売店がありはするから、買い物には困りそうにはないけれど。

アリアは、跡部さんと出掛けるらしい。

私も、兄さんを誘って出掛ける事にした。

「こうやって出掛けるの、久し振りだね」

「ああ、そうだな」

登山すら、忙しくて行けなかった。

仕方ない。大会と骨折と、生徒会や部活の引き継ぎと、二人して多忙だったのだから。

兄さんの右手に、左手を絡める。

見上げれば、兄さんが私と母さんにしか分からないだろう、小さな笑みを浮かべた。

「何処か行きたい所はあるか」

「うん。先ずはプリクラかな」

兄さんの眉間にシワが寄って、思わず笑ってしまった。

可愛い。

「写真でいいだろう。騒がしい所は苦手なんだ」

それは、知っている。

「背景デコれないからなぁ。まぁ、兄さんが苦手だから、写真で我慢するよ」

「すまないな」

「いいよ」

パソコンに取り込んで、加工すればいい。

コピー用紙の変わりに、プリクラシートでプリントアウトすれば、プリクラにもなる。

「兄さんは、出掛けたい場所ないの?」

「お前が行きたい所で構わない」

「そっか。…じゃあ」

言いつつ、私は唇に笑みを乗せる。

「アクセサリーショップに行こう」





アクセサリーショップと言えば、兄さんはかなり意外だったらしく驚いていた。

それはそうだ、兄さんは私が装飾品に興味がないのを知っているから。

兄さんに何か贈り物しようと色々考えて、アリアと敦菜先輩と律先輩に聞いてみた。

アクセサリーが無難だと聞いて、そうしたのだ。

身に付けないにしても、私みたいにお守りにはなるから。

「どれがいい?」

「お前のではなく、俺のか?」

「うん」

兄さんが困惑している。

「何かお探しですか?」

「はい。アクセサリーを見たくて。あ、私のではなく、彼のです」

愛想良く聞いてきた店員さんは、意外だったらしく、少し目を見開いた。

その後に、柔らかい営業スマイル。

「折角ですから、ペアは如何ですか?」

「どうする?」

私が聞けば、兄さんは困惑したままだ。

「ペアリングなどは如何でしょうか。他にもペンダントもございます。彼氏さんへのメッセージをお入れする事も出来ますよ」

「そうですか。彼氏じゃなくて、兄なんですけど」

今度は、店員さんが意外そうにした。
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