Teach the Truth

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「私、魔法省の人間なんだけど」
「知ってる」

 なんでと続ける前に、ピーターの方から話しだす。

「シリウスはハロウィーン以来、僕をすごい形相で追いかけまわすんだ。
 わけがわからないよ」
「心当たりはないのか?」
「全然」

 ピーターの目はまっすぐに私を見ない。
 昔から、どこか逃げ道を探すようなやつだったけど。
 今はわずかに視線が逸れている気がする。
 まっすぐに見返してくれているようで、実際、見ているのは私の後ろの壁ではないのか。

「リリーとジェームズの葬儀に、来てないよな。ピーター」
「え、行ったよ?」

 嘘だ。
 私は葬儀の参列者名簿の中にピーターとシリウスの名前だけ見ていない。
 来てしかるべき二人なのに。

「二人の愛息子、ハリーのことは知ってる?」
「ど、どこに行ったの!?」
「ダンブルドアが引き取ったって」
「へえ〜……」

 物好きだね、とでもいいだすのだろうか。

「それに私も気になっていることがある」
「何を?」

 なんだろう。
 小さい子供とでも話している感じがする。
 私たちはもういい大人なのに。

「ヴォルデモートが死んだ日以来、ピーター、君はどこにいた?」

 はっきりと“名前を言ってはいけないあの人”の名前を口にするが、それを咎めるものはピーターの目だけだ。

 家には争った形跡もないのに、彼だけが消えていた。
 荒々しい男の足音はあったけど、たったひとつきり。
 しかも見覚えのある足跡だった。

「シリウスはどうして君を追いかけている?」

 秘密の守人ならば、どうして葬儀にも出ずにピーターを探し続けていたんだ。

「誰もジェームズを裏切らないと、思っていた」
「誰もあの幸せを壊せないと思っていたんだ」
「どうして、シリウスが僕を追い掛けていると思う?」

 どうしてが多すぎるけど、何故か確信に近づいている気はしていた。

「シリウスは、私たちを裏切れるほど器用なヤツじゃない。
 ジェームズとシリウスの友情は、私達の誰よりも強かった」
「それは、どうだろう?
 だって、秘密の守人はシリウスだったじゃないか」
「そこだ」

 喧騒が遠退きはじめる。

「シリウスは、本当に秘密の守人だったのか?」

 そんなこと知らないよと、言ってほしかったのだろうか。私は。

 視界が揺らぐ。

「ミオは、闇払いになったんだよね」

 ピーターの声が遠い。

「ミオを殺したくはないんだ。
 だから、人形にするよ。
 僕に忠実な、ね」
「そうさ、秘密の守人は僕だ」

 暗い深淵が迫ってくる。
 ピーターの耳障りな声が聞こえてくるのに。
 手で耳を塞ぐことさえ出来ない。

「でも、ミオはもうなにも出来ない。
 僕の綺麗な殺人人形(キリングドール)になってもらうよ」

 抗う意識の中で、安堵が広がっていた。
 やっぱり、シリウスは裏切っていなかったんだと。
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