Eternal Friends

□02)ホグワーツ入学
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 杖は、日本を離れる前日に枕元に届いていた。
 サンタじゃあるまいし。
 時期も違うし。

 細長い木の棒は手によく馴染んで、握っているととても安心した。

 汽笛の音で目を覚ます。
 もう着いたらしい。

 ホグワーツ特急に乗るのにかなりまごついたけど、綺麗な赤毛の女の子に助けてもらった。

「あの壁にまっすぐ。
 迷ったり怖がったりしちゃダメよ」

 ポンと押された背中が優しい勇気をくれた。

 寝ぼけながらローブを羽織って降りると、大男が「イッチ年生はこっち!!」と叫んでいる。

――あれ?どうして、言葉がわかるんだろう???

 少し不思議に思ったけど、気にしないで置くことにした。
 ここまで来て、今更だ。

 整備されていない小道を歩いていくと、しばらくして急に視界が開ける。
 思わず、立ち止まって情景を仰いだ。

 新月の闇より深い色の湖、その向こうに高い山が聳え――お城があった。
 昔なにかの絵本で見た景色そのままで、怖くもあるけれど、同時に高揚感が心中を満たしていく。
 不安よりも期待が大きいのは誰よりも私がわかっている。

 勇者が魔女を退治しに行く時って、こんな気分かな。
 とあて外れなことを考えて笑う私を、隣にいた子が怪訝そうに振り返った。

 案内されるままに私は進んで行く。
 案内する人はいつのまにか細長い三角帽を被った黒ずくめの女性に変わっていた。
 小さな部屋にぎゅうぎゅうに押し込まれ、扉の向こうのざわめきにもっとどきどきしてくる。

 だって、今見えてるこの扉を私は知っている。
 扉の向こうにはあの老人がいるんだ。
 私を導いたあのへんてこりんな老人が。

 最初になんて云おう?ありがとうございます?あ、この杖のお礼もいわなきゃ。
 それから、姉の伝言を伝えなきゃ。

「ふぁ〜っ!!」

 いろいろ考えていたことが全部吹き飛んでしまった。
 先が見えないくらい大きな部屋がそこにあったから。
 屋根が見えないけど、蝋燭があるってことは壁があるんだろうか。
 それにしても不思議だ。
 昼と夜が逆になるくらい不思議だ。
 まっすぐに伸びる両側のテーブルの真ん中を通って行くと、いっぱいの目が覗いていた。
 上級生、だろうな。
 優しそうな目も睨みつけるような目もあったけど、逆にそれが落ちつかせてくれる。

 でも、その正面に立つのは別。
 目を意識しないように目の前に置かれた襤褸のスツールに目を向けた。
 なにをするんだろうか。
 思いも寄らないことばかりで、楽しくなってくる。

 火照っているであろう顔を気にしながら、全体を見廻して行くと見たことのある顔を見つけた。

 あ。
 左端のテーブルに駅のホームで教えてくれた女の子がにっこりと微笑んでくれた。
 その隣にいる男性になにか囁いている。
 綺麗に笑う人だ。
 姉とは違うけど、少し安心した。

 歌い出す帽子に驚いたけど、面白い。
 帽子が組分けをするなんて、魔法使いみたいだ。
 ――あ、魔法学校だっけ。

 グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。
 どこに行っても面白そうだ。

 先に呼ばれた人がどんどん振り分けられていく。
 そして、私の番が来る。

「カミキ、ミオ」

 帽子を被ると、こんにちは、と話しかけられて驚いた。



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