Eternal Friends

□04)式神便
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* * *(ジェームズ視点)
ドリーム設定





 次々と飛んでくる梟たちにミオは目を最大限に見開いて、驚き、楽しんでいた。

 落ちてくる荷物に感歎の声をあげる生徒たちの中で、目の前の人物はやはり唸っている。

「入学許可証も梟で届いたんでしょ?」

 リリーが尋ねる言葉にミオは黒髪を揺らして肯く。
 小動物……リスのような可愛さだ。

「こんだけいっぱいは見たことない!!」

 両手で握りこぶしを作って力説する姿は、まるで子供で。
 いや、実際に子供なんだけど。

 シリウスの家族からのささやかな甘いお菓子の食料支援に、リーマスが目を輝かせて、どうにかして貰おうと懐柔しているだとか、それをどうでもいいから目の前から消してくれと頭を抱えているシリウスだとか、家族からの数枚の手紙を喜んで読んでいるピーターだとか。
 僕らは全然子供だけど。

 リリーと僕とシリウスとリーマスの手元に届く沢山の手紙に、ミオは実に嬉しそうにしている。
 明日からはきっと君にも届くようになると思うけど。

「梟って、こういう意味だったんだね」

 ワケのわからないその言葉に心の中で首を傾げていると、黒髪の小さなミオの頭の上に一羽の大きな白い鳥が舞い降りてきた。
 梟ではない。
 もっとほっそりとしていて大きくて、どちらかというと賢そうで。
 でも、なんだ?生き物みたいで違うもののような。

 広間が静まり返る中、ミオは慣れた手つきでその足を掴んで手元に引き寄せた。

「あはは。
 お姉ちゃん派手好きだからね」
「元気そうで何よりだわ」

 リリーもなつかしそうに緑石の瞳を細める。
 手を出して撫でようとするのを思わず片手が引き止めていた。
 噛まれそうな、鋭いくちばし。

「なんだ、それ!?
 鷹!?」
「うわぁ鷹見るのも真っ白いのを見るのも初めてだよ。
 僕!」

 いつもは静かなピーターまでもが席を立つ。
 手を掴んだ僕をリリーは不思議そうに振りかえる。

「何かしら、ジェームズ?」
「え、いや、噛まない、か?」
「え?」

 緑と黒の二つの瞳が僕を驚いて見て、何か納得したように笑う。
 なにか可笑しかっただろうか。
 僕はただ彼女の手が傷つかないか、心配だっただけだ。

「ふふふっ……ご、ごめん……なさい、ね?」
「知らないのも……無理、ないけど……っ」

 必死で笑いを堪える二人の姿は少し変だった。
 そういったら、きっとリリーは怒るだろうから言わないでおこう。

「手紙、つけてないね」

 彼女らの笑いの空気を宥めるように、リーマスが呟く。
 いや、そんな意味はきっとなかったのだろうけど、少しだけ、笑いが収まったようだ。

 二人だけの合図でもあるのか、さっきから何度も互いに目を見合わせる。

「ねぇ、お姉さんのアレは変わってないのかしら。
 だったら、私にやらせて欲しいわ」

 すっと二本の指を桜色の唇に当てるリリーに、僅かに頬を染めたミオが肯く。
 一種神秘的な空気が漂う。

「ジェームズ、今度は邪魔しないでね」

 ミオの手から鷹を捕り、リリーはそれに向かってにっこりと春の微笑みを浮かべた。
 ホグワーツ中で誰もが向けられたがっているあの貴重な微笑を。

「わーリリーっっ?」
「なっっっ!?」

 あろうことか彼女はそのまま白い鷹に口付けてしまった。
 僕も広間中のほとんどの生徒が固まりかけたが、バサバサと四方に散らばる音に更に固まる。

 それは白い紙……手紙だ。
 数枚の手紙が勝手にどこかへと飛んでいく。
 リリーとミオの手元には一通ずつ。
 どうやら校長のもとにも一通。
 横から覗きこんだそれは、真っ白で不思議な紙に不思議な文様が描かれている。
 ホグワーツの入学許可証よりも数段変わっている。

「きゃー!
 私にもあるのねっ」

 手紙にキスをして急いで開いて読み始めるリリーの様子は、まさに近年稀にみる。
 どんな悪戯をしてもここまでの反応はみられないだろう。
 手紙一つでこの美少女をここまで動揺させるとは、ミオのお姉さんには一度会ってみたいものだ。

 というか、ラブレターを差し置いてこの反応。
 今日、出した連中はどんな気分だろう。

「えっと、二人とも。
 お願いだから説明をして欲しいんだけど……」

 申し訳なさそうに言ってみたが、二人ともが手紙に夢中で聞いてくれやしない。



* * *
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