Eternal Friends

□06)図書室の先輩
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 図書室の本棚という奴は、背の低い人に優しく出来ていないと思う。

 いや、きっと学年ごとに届きやすい位置に置いているんだと思う。
 下のほうにあるのは基本呪文大全とか、魔法生物辞典とか、下の学年が使うもののほうが多い。

「これか?」

 自分の身長の届かない範囲にある本を取ろうとしていたミオの後ろから近づいてきた影が、的確にそれを手に取る。
 彼の手にすでに数冊の分厚い本がある事からして、単に通りかかったついでであろう。
 だが、つけているのはスリザリンカラーのネクタイであり、グリフィンドールの彼女に対して眉間に皺を寄せるでなく、ただ普通に接している光景はホグワーツでも珍しいツーショットである。

「ありがとー、セブルス」

 悪戯仕掛け人の標的であるセブルスと悪戯仕掛け人の玩具のミオ。

 彼が取った本のタイトルは応用呪文集で、一年生にはかなり高度な本である。
 題名を一瞥してからミオに手渡す。

「レポートは終っているのか?」
「いーの、そんなのは後で」

 リリーたちは気をつけろとか近づいたら噛まれるとかいろいろ忠告してくれたけど、セブルスは不器用なだけでけっこう優しい。

 その辺に置いておいた他の数冊の本を持って先に歩こうとしたミオに対し、少し後から遅れてついてくる。
 座る席は窓辺の指定テーブル指定席。
 ドサリとテーブルに本を置くと、上に更に数冊を乗せてからセブルスは隣に座る。

「なに?」
「せめてレポートを終らせてからではいかがかな。
 ミオ」
「やだ。
 気がノらない」

 キッパリと言い切ってから、さっき取ってもらった本を開く。
 一瞬、ピリッとくる刺激の後からは、求める言葉を捜してページを繰る。

「………………今度は手伝わないぞ……」

 隣で深いため息が聞こえたのをこっそり笑う。
 なんだかんだ言って、セブルスはよく教えてくれるのだ。
 レポートがわからなくて詰まっているとさりげなくどこを参考にすればいいのか示してくれる。
 全面的に甘やかしてくれるわけでもないが、いい協力者といったところだ。

「そんなこといわないでください、セブルス先輩」

 協力者を減らしてはいけない、と言葉だけは可愛らしくおねだりしてみる。
 たぶん、眉間に皺寄せてるのだろう。

「また、そう都合のいい時だけ先輩呼ばわりか」
「えーやなのー?」
「お前が言うと下心しか見えないからな」

 セブルスは言葉を飾らない。
 ストレートに簡潔に話してくれるのはいいんだけど、他の人だったらたぶん気分わるいかもしれない。

「そりゃー下心ありありだから」

 下心がある時は素直に率直に、というのが家訓だ。

「ミオ、いつも言っているが、基本呪文はすべて理解出来ているのか?」
「そりゃー……いざという時使える呪文知らなきゃ意味ないよ」
「基本が出来ていなければ、高度な呪文は扱いきれないぞ」

 至極最もな意見ではある。
 でも、私が学びにきた目的のひとつは遊ぶためのだけの便利な魔法だけじゃない。
 別に成績なんてたいして気にしない。
 大切なのは使う方のココロだ。

「だ・か・らっ優秀なセブルス先輩に頼んでるんじゃありませんか」
「迷惑だ」

 キッパリと言い切られて、哀しくなって本から顔をあげると、彼は椅子に軽く寄りかかって本を読んでいる。
 魔法植物の本も一緒に持ってきてあるから、持っている方はおそらく魔法薬に関する本だろう。
 難しすぎて私にはわかりにくい。

 慣れればなんとかわかるかもしれないけど、今はお手上げだ。

 さっさと書き写してしまおう。

 ミオは羊皮紙と羽根ペンを取り出して、呪文と効果を書き写しはじめた。



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